[月刊『寺門興隆』 2010年12月号より転載]

僧侶と海商たちの東シナ海 榎本渉著 講談社 1680円
遣唐使廃止後、大陸との貿易が復活するまでの空白期間こそが、密航僧の活躍時代だったと著者は説く。京都・東福寺の開山円爾らの記録をもとに知られざる海の仏教史がひもとかれる。



遊楽と信仰の文化学 堤邦彦・徳田和夫編 森話社 7140円
かつて、ご開帳・巡拝・参詣の場に使われる略縁起は老若男女を注目させるものでなくてはならなかった。絵巻や曼荼羅、のぞきからくり、浄瑠璃などに込められた縁起を読み解く研究書。



日本中世の国家と仏教 佐藤弘夫著 吉川弘文館 2520円
中世の仏教とは、前後の時代とどのように異なるのか。その特質を十世紀から十六世紀までを視座に入れ、当時の仏教の全体像の再構築が試みられる。



日本の仏教思想 頼住光子著 北樹出版 2625円
「原文で読む仏教入門」が副題。仏教とは何か、に始まり原始仏教からアジア各地の伝播、日本近代仏教思想までを視野に入れ論じた仏教思想入門書。



意味不明でありがたいのか 戸次公正著 祥伝社 798円
「お経は日本語で」が副題。著者はお経の現代日本語訳化に取り組み、木津無庵についての本も上梓した大阪の真宗大谷派住職。現代語訳のお経で行う葬儀や法事の意義を説く。新書判。



仏教とアドラー心理学 岡野守也著 佼成出版社 2415円
副題は「自我から覚りへ」。対人関係などを重視するアドラー心理学が鬱病や神経症などの心身症治療に注目されている。仏教との共通点を「縁起」や「共同体感覚」をキーワードに解説。



懺悔道としての哲学 田辺元哲学選2 藤田正勝編 岩波書店 1260円
第二次大戦末期、自らの哲学思想を懺悔した田辺元はその後、理性の哲学を超えるものとして「懺悔道」の哲学を提唱、追求する。「親鸞の三願転入説と懺悔道の絶対還相観」他。文庫版。



荘子と遊ぶ 禅的思考の源流へ 玄侑宗久著 筑摩書房 1680円
様々な人物を登場させ、たとえ話で生死を超えた道を説く『荘子』。作家で臨済宗妙心寺派住職が、著者を登場させながらその心を軽妙に説く解説書。



葬式のはなし 菅純和著 法藏館 1050円
葬儀が起きたら最初に誰に連絡すべきか? 遺言に「葬儀はするな」と書いてあったら? など葬儀にまつわる素朴な五十の疑問に月刊『御堂さん』編集長の本願寺派住職が易しく答える。



必生 闘う仏教 佐々井秀嶺著 集英社 735円
半世紀近くをインド仏教復興運動に捧げ現地仏教徒から「バンテー・ジー(上人様)」と親しまれる稀代の傑僧が、自らの半生を振り返る。新書判。



仏教ビジネスのからくり 井上暉堂著 朝日新聞出版 735円
「MBA老師が喝破する」が副題。元経済誌記者でMBAを修得した臨済宗僧侶が、お寺の世界と経済構造を辛口、毒舌まじりに解説する。新書判。



こんな時 親鸞さんなら、こう答える 川村妙慶著 教育評論社 1260円
副題は「『思い込み』を捨てる48のヒント」。一日二百件余の身の上相談がブログに殺到する真宗大谷派の女性僧侶が、悩みを解決するヒントを説く。



お経から人生を学ぼう ひろさちや著 日本放送出版協会 1365円
お経は葬儀の道具でなく、人間らしく生きるための智慧の宝庫である、と著者は説く。阿含経、維摩経、般若心経、観音経など各経典を易しくガイド。



東西透かし彫り ブライアン・バークガフニ著 グラフ社 1575円
カナダ出身の敬虔なカトリック教徒の青年が、日本の妙心寺派で出家得度。九年に及ぶ僧堂修行を経て得たものは何だったか。自伝を交えた比較宗教論。



お稲荷様って、神様?仏様? 支倉清・伊藤時彦著 築地書館 1680円
お稲荷さんや、お地蔵さん信仰とは何か。東京の小学校の元校長と元教頭が、江戸東京ゆかりの寺社をめぐり、その古来から伝わる信心の本質に迫る。



仏画の尊容表現 泉武夫著 中央公論美術出版 31500円
平安時代から鎌倉時代は宗教絵画の隆盛期でもあった。当時制作された仏画を対象に特色、属性などを分析し、尊容の表現術を浮き彫りにする研究書。



バラエティ化する宗教 石井研士編著 青弓社 2100円
スピリチュアルやオカルトなどのブームの背景にあるのが、テレビ番組だ。エンターテイメントとして発信される宗教の構図やテレビとの相関関係などNHKから民間放送まで分析する。 



仏教書総目録 2011 仏教書総目録刊行会 300円
辞典から聖典・入門書・専門書・文学美術・雑誌・漫画・マルチメディアまで今年出版された新刊を含む入手可能な仏教書五千点を網羅した総目録最 新版。





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