[『月刊住職』 2015年9月号より転載]

近世の王権と仏教 大桑斉著 思文閣出版 6500円
動乱の戦国時代ののち、265年間にわたる幕藩体制を敷いた徳川家。家康から五代、綱吉にいたる将軍権力の成り立ちと権力に組み込まれた宗教性、近世の仏教的世界が論じられる。



日野昭論文集Ⅰ 日本書紀と古代の仏教 和泉書院 3000円
日本古代の氏族伝承研究の泰斗だった故・日野昭龍谷大学名誉教授の生前の論文集。第一集は『日本書紀』『元興寺伽藍縁起』に記された日本古代の仏教受容伝承に着目した論文を収載。



天平期の僧と仏 根本誠二著 岩田書院 3400円
仏教説話『日本霊異記』には僧俗が一心に仏に祈りを捧げる姿が描かれるが、その宗教世界とはどのようなものだったか。行基、鑑真、道鏡、良弁の姿から天平時代の仏の世界が描かれる。



中世禅籍叢刊 第二巻 道元集 臨川書店 18000円
全十一巻予定の中世禅籍叢刊の第二巻は道元の著作集。近年注目される真福寺本『大悟』や称名寺本『真字正法眼蔵』、未刊の永福庵本『御遺言記』などを収録する。石井修道責任編集。



近世浄土宗教団の足跡 宇高良哲著 浄土宗出版 2200円
徳川家と浄土宗はいかにつながっていたか。戦国時代から江戸時代にかけた浄土宗教団の変遷が辿られる。「近世初期における知恩院と増上寺」他。



法華経をたずねて 今出川行雲著 探究社 1600円
「その心と良寛の法華讃」が副題。元三大師こと良源の比叡山の論議「広学竪義」から法華経の心に触れたという天台宗大林院住職が、法華経思想の展開と良寛に至る道を解き明かす。



宗祖に訊く 大竹晋著 国書刊行会 4500円
「日本仏教十三宗 教えの違い総わかり」が副題。インド伝来の仏教は日本でいかに展開したか。仏典翻訳家が架空のシンポジウム仕立てで、十三宗の教えと特徴を分かりやすく解説する。



全訳注 四國遍禮道指南 眞念著 講談社 1080円
江戸時代(1684年)に板行された四国遍路ガイドブック『四國遍禮道指南』は明治期に至るまでのロングセラー。現代語訳化し原本を反映した現代地図も収載。稲田道彦訳注。文庫判。



雨森芳洲 朝鮮学の展開と禅思想 信原修著 明石書店 3200円
雨森芳洲は江戸時代中期の朱子学派の儒学者。対馬藩に仕え、秀れた語学力を生かして李氏朝鮮の外交通史として活躍した。その実績と、国際人として生きた思想と禅の関係性が辿られる。



みんなに読んでほしい本当の話 第4集 篠原鋭一著 興山舎 2000円
本誌別冊の人気連載の第四集。自死、認知症の介護、性同一性障害など苦に向き合い、懸命に生き、支え合う人々の姿を曹洞宗住職が仏の眼差しで綴る31の感動実話集。



曽我量深講話録 第一巻 大法輪閣 2700円
仏と我の関係を徹底追究し、一度は異安心の謗りを受けるも、のちに大谷大学学長に就いた曽我量深の晩年の講話集(全五巻)の第一巻が刊行された。



親鸞聖人の越後流罪を見直す 今井雅晴著 自照社出版 800円
念仏停止の勅令により法然と共に都を追われた親鸞。なぜ配流先は越後だったのか。真宗文化センター所長が背景に迫る。「後鳥羽上皇への非難」他。



仏教国際ネットワークの源流 中西直樹・吉永進一著 三人社 3000円
ハワイ開教、欧米諸国における仏教への関心の高まりなど明治二十年代の仏教を通じた国際ネットワーク。その運動と思想の実態を分析した研究論考。



出家的人生のすすめ 佐々木閑著 集英社 720円
出家とは世を捨てることではなく、社会からの支援を前提に仲間と共に求めるものを追求する道、と著者は説く。戒律研究者による仏教的生き方指南。



禅者列伝 宇井伯寿著 書肆心水 6300円
禅とは何か。仏教研究の大家が栄西など祖師から宮本武蔵といった剣術家、為政者まで歴史上の人物数十人の生き様や逸話から、禅思想を紹介したもの。



壊れた仏像の声を聴く 薮内佐斗司著 角川書店 1600円
副題は「文化財の保存と修復」。時代を超えて古の仏像が守られてきたのは優れた修復技術にある。現場に立つ第一人者が見た日本人の信仰と仏の美。



歴史のなかの石造物 山川均著 吉川弘文館 2500円
層塔、石仏、五輪塔など今も各地に残る中世の石造物。それらの石造文化の背景にある異界観、死者と神仏が複雑に織り成す関係性が読み解かれる。





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