[『月刊住職』 2018年7月号より転載]

古代インド沙門の研究 山崎守一著 大蔵出版 18000円
カースト制の頂点に立つバラモンの宗教的権威を認めず、出家遊行者として生まれた沙門。最古層の文献から、仏教、ジャイナ教の共通母体である沙門と、教義の独自性が読み解かれる。



中世日本の王権と禅・宋学 小島毅編 汲古書院 7000円
鎌倉時代から南北朝期にかけて、日中貿易が盛んだった中世における王権と仏教、宋学の実態等を考察した学術論文集。元に留学した臨済僧侶の宋学理解と王権の関係性なども注目される。



位牌の成立 菊地章太著 東洋大学出版会 2800円
副題は「儒教儀礼から仏教民俗へ」。位牌のルーツを東アジア、中国の儒教の葬送儀礼から辿り、現代に伝わる日本人の死生観、霊魂観の変遷を浮き彫りにする。「尊宿の葬儀作法」など。



仏教と慈しみ ケネス田中編著 武蔵野大学出版会 1700円
副題は「〈自利利他〉がわかるオムニバス仏教講座」。仏教が理想とする利他行の実践について専門家五人(ケネス田中、新作慶明、長尾重輝、小山一行、日野慧運)が解説している。



近代真宗教学 往生論の真髄 鍵主良敬著 方丈堂出版 2300円
近代の真宗教学に多大なる影響を与えた曽我量深など宗教学者は親鸞の往生論を誤読したのか。近年、真宗僧侶の中で再燃している往生論論争に、大谷大学名誉教授が検証を試みた論考。



北陸の学僧、碩学の近代 高畑崇導著 北國新聞社 2200円
副題は「存在証明の系譜」。西洋思想が流入する近代日本で、北陸の僧侶らは新たな教学の構築に向き合っていた。石川舜台、雪門玄松、玄寧など浄土真宗や禅僧の思想と活動が辿られる。



禅と哲学のあいだ 形山睡峰著 佼成出版社 2000円
「平等は差別をもって現れる」が副題。心のありようを探るのに、仏教は相反する言葉で存在の根源に迫った。臨済宗僧侶が、生と死、差別と平等など二つの言葉から仏教の思考を説く。



近代化する金閣 藤田和敏著 法藏館 2000円
仏教教団はいかに形成され、近代的な組織を成立させたか。京都の大本山相国寺の歴史を軸に豊富な史料を駆使し、現代へとつながる展開が辿られる。「臨済宗と相国寺派の戦争協力」など。



上世日本の仏教文化と政治 辻善之助著 書肆心水 7400円
日本仏教の国家的な性質は、なぜなのか。本来、出世間的であるべき仏教はなぜ世間的になったのか。仏教史学者の泰斗による名著が復刊された。



各界第一人者25人による 今こそお寺に言いたいこと 興山舎 2300円
本誌の「寺院・住職に直言・提言する」の単行本化。元首相、俳優、作家、研究者など豪華執筆陣25人からの貴重なお寺への要望集。『月刊住職』編集部編。



進化するマインドフルネス 飯塚まり編著 創元社 2000円
アメリカから発信された仏教系瞑想法、マインドフルネスはいかに西洋に受け入れられ、メンタルケアにも取り入れられたか。多様な視点から考察。



真宗大谷派淨圓寺所蔵 藤井靜宣関連資料 あるむ 2000円
戦前の日中仏教交流はいかなるものだったか。上海の東亜同文書院に学んだ水野梅曉と藤井靜宣の貴重な遺物を整理し目録と解説を付す。三好章監修。



生きて死ぬ力 石上智康著 中央公論新社 1000円
著者は変化目まぐるしい現代に、大教団のトップに立ち改革を進める81歳の浄土真宗本願寺派総長。生老病死に向き合う心が綴られる。新書判。



葬送の倫理 久野昭著 紀伊國屋書店 2400円
死者とのかかわりは生者にとって、どのような意味を持つのか。古代の死霊観や葬送の変遷など東西の文学、民俗学的研究から考察した名著の新装版。



日本人は先祖をどう祀ってきたか 武光誠著 河出書房新社 1600円
家族葬や墓じまいなど、先祖祭祀は変わりつつある。歴史研究者が先祖供養から見た日本史を描く。「明治維新以後に起きた『葬送』の大変化」他。



1分で悟り 名取芳彦著 ワニブックス 1200円
どんな状況にも動じず、心のもやもやもさっと晴らす。日常生活の中で起きる心の動揺に向き合う方法を、東京の真言宗豊山派密蔵院住職が伝授する。



感じて、ゆるす仏教 藤田一照・魚川祐司著 KADOKAWA 1500円
国内外で禅の指導を行う曹洞宗僧侶と気鋭の著述家が仏教について語り合う。「『自分』の絆を解体するもの」「『マインドフルネス』の問題」など。





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