[月刊『寺門興隆』 2010年10月号より転載]
渡海天台僧の史的研究 齊藤圓眞著 山喜房佛書林 15750円
奈良時代から平安時代にかけて大陸に渡った多くの天台僧らは、現地で何を得て、故国でどう発展させたのか。最澄をはじめ留学僧らの役割と日本文化に与えた影響を考察した学術研究書。
近世三昧聖と葬送文化 木下光生著 塙書房 11550円
かつて埋火葬や墓地管理を担っていたのは社会的に蔑視されていた三昧聖と呼ばれる存在だった。近世の畿内地方を中心に、その実態と葬送、死体処理法、死生観を明らかにした研究書。
西山浄土教の基盤と展開 五十嵐隆幸著 思文閣出版 4200円
法然から門弟の證空や行観を中心に西山教義へと至る日本浄土教の構造を旧来の「正統・異端」といった対立構造ではなく浄土教義を軸に考察する。
看護と生老病死 井上ウィマラ著 三輪書店 2520円
副題は「仏教心理で困難な事例を読み解く」。本誌別冊に連載中の著者による実践仏教心理学。看護に活かす瞑想エクササイズから認知症の高齢者や延命治療との向き合い方まで綴られる。
日本人の宗教と動物観 殺生と肉食 中村生雄著 吉川弘文館 2730円
殺生肉食をタブーとしてきた日本人固有の意識はいかに形成され、どのような構造になっているのか。仏教儀礼から狩猟文化まで動物との関わりを分析し、宗教観・動物観の深層に迫る。
仏教と西洋の出会い F・ルノワール著 トランスビュー 4830円
西洋社会にとって仏教とは何だったのか。古代ギリシャから大航海時代、現代の哲学まで西洋史における仏教の影響力を、フランスの宗教誌編集長が辿る。翻訳は今枝由郎・富樫瓔子。
『教行信証』を読む 親鸞の世界へ 山折哲雄著 岩波書店 840円
人殺しでも宗教的には救われるのか。救われるための条件とは何か。『教行信証』の核心部分を、親鸞の思想的展開を辿りながら読み解く。新書判。
日蓮聖人のことば 菅野日彰著 大法輪閣 1890円
法華経と共に重要聖典として親しまれている『日蓮聖人ご遺文』。静岡県の日蓮宗本山村松海長寺貫首が二十五の言葉をよりぬき現代語訳と共に紹介。
祖師に学ぶ禁煙の教え 千葉公慈・来馬明規著 仏教タイムス社 1260円
「喫煙如法ならず、禁煙すべし」と煙草の害毒を江戸時代に警鐘を鳴らしていた禅僧がいた。曹洞宗僧侶、卍山道白と面山瑞方がその人。禁煙運動で知られる住職らが語録を現代語訳化。
ひとりで生きる道 大角修著 PHP研究所 1575円
「大愚 良寛の生涯に学ぶ」が副題。子供と遊ぶイメージが強い良寛和尚だが、若い頃は激しい性格だった。宗教評論家が知られざる求道の姿を描く。
禅が教える「考えない」作法 高田明和著 亜紀書房 1575円
「昨日を悔やむな、明日を思いわずらうな」が副題。本誌連載中の医学博士が、坐禅や公案が脳にもたらす効用と心のメカニズムを易しく解説する。
禅語 心に響くいい話 金嶽宗信著 芙蓉書房出版 1575円
著者は東京・臨済宗大徳寺派住職。大道無門、歩々是道場、看坐雲起時など古くから親しまれてきた禅語の意味を自らの体験を交えて説き明かす。
七十を過ぎてわかったこと 西村惠心著 禅文化研究所 2100円
今年七十七歳を迎えた禅文化研究所所長が、これまでの来し方を振り返って綴る法話集。「我が事としての老い」「灰皿との惜別」「ニワトリ人生」他。
静思のすすめ 大谷徹奘著 文藝春秋 800円
著者は修学旅行生からお年寄りまで、その説法の魅力で多くの人を惹き付ける奈良・法相宗大本山薬師寺執事。生老病死の悩みの処方箋を説く。新書判。
おてらくご 釈徹宗著 本願寺出版社 1890円
お説教がルーツの落語は、仏教をネタにしたものが多い。落語ブームを受け、落語を通じて仏教の面白さを知ってほしいと本誌連載中の浄土真宗本願寺派住職が説くお寺+落語論。CD付。
禊の塔 羽黒山五重塔仄聞 久木綾子著 新宿書房 2100円
著者は二年前に八十九歳で、山口の国宝・瑠璃光寺五重塔を舞台にしたデビュー作で一躍脚光を浴びた女流作家。第二作目となる本書は出羽の羽黒山にそびえる五重塔建立に関わる歴史小説。
美しき仏像 田中ひろみ著 ぶんか社 1365円
京都・東寺の帝釈天は「美形の余裕漂うリラックス感」、醍醐寺の弥勒菩薩は「隙のない真の美形像」など仏像を新たな美の基準で紹介するガイド本。
現代宗教(2010) 国際宗教研究所編 秋山書店 2310円
特集は「エコロジーとスピリチュアリティ」。スピリチュアル(霊性)と環境問題を様々な視点から取り上げる。「樹木葬と地域コミュニティ」など。
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