[月刊『寺門興隆』 2011年1月号より転載]
評説インド仏教哲学史 山口瑞鳳著 岩波書店 10395円
最古層テクストを解読すると仏陀の教えは部派仏教の時代から誤解されていたと著者はいう。ナーガールジュナから八世紀のシャーンタラクシタに伝わったという真の仏陀の教えを復元。
沙門ブッダの成立 山崎守一著 大蔵出版 2415円
原始仏教とジャイナ教はどう違うのか。ブッダ登場の背景とその時代を、両方の宗教聖典の比較分析を通じて明らかにする。「ウパニシャッドの思想」「仏教を理解するための資料論」他。
宗教学事典 星野英紀・池上良正他編 丸善 21000円
急速に変化を遂げる世界。仏教をはじめ宗教はいま、どこに向かっているのか。最新の宗教学研究を網羅した項目数約二百五十、巻末索引約二千語のハンディサイズの本格派中項目事典。
王朝美術における結縁装飾法華経 山川出版社 5040円
平家納経や久能寺経など、納経文化はいつ生まれ、どう変化したか。平安から鎌倉までの時代背景を視野に入れ、制作背景を分析。著者は上智大学講師のへレーネ・アルト。監修・江上綏。
現代語訳禅茶録 寂庵宗澤著・吉野白雲監修 知泉書館 2415円
千利休の孫、千宗旦の遺書とされる『茶禅同一味』に江戸時代の禅僧・寂庵宗澤が補足編集した『禅茶録』。柳宗悦が「すべての茶人の座右におくべき名著」と評した書の現代語訳。英訳付。
師、威厳あって温厚なり 珂然著・桝田英伸訳 風濤社 2940円
「法然院の忍澂上人のはなし」が副題。江戸時代の学僧で、多くの僧侶の伝記を残した珂然による京都・法然院の、『忍澂和尚行業記』が現代語訳化。
現代宗教意識論 大澤真幸著 弘文堂 2100円
社会で起きる出来事は宗教現象である、と社会学者である著者は説く。新興宗教から猟奇的殺人事件まで、その深層心理にあるものを宗教の視点から論じる。「世界の中心で神を呼ぶ」他。
上手な逝き方 大村英昭・嵐山光三郎著 集英社 735円
本誌連載中の浄土真宗本願寺派元住職と作家が、老いや死を避けようとする風潮について論じた対談集。「千の風になって、どこへ行く?」「無縁社会と『おひとりさま』」など。新書判。
親鸞と道元 五木寛之・立松和平著 祥伝社 1575円
それまでの仏教と比べ、親鸞や道元の教えは何が新しかったのか。両者の共通点はどこにあるのか。昨年亡くなった立松和平の最後の対談集。「戒律を守った道元、破戒した親鸞」他。
CD 慈愛LOVE ラグインターナショナルミュージック 2500円
日本を代表する演奏家四人(山下洋輔、日野皓正、安達久美、岡本博文)が、僧侶らの読経に合わせて即興演奏を行った異色コラボレーションCD。妙音による極楽浄土が広がる。
誰も書かなかった親鸞 同朋大学仏教文化研究所編 法藏館 2940円
親鸞聖人絵伝には、何が描かれているのか。伝承や定説には書かれなかった親鸞の姿を、研究者十人が論じる。「二つの絵巻からみた師弟関係」他。
語る禅僧 南直哉著 筑摩書房 819円
只管打坐を説く曹洞宗にあって「語る」とは、どういうことか。青森・恐山院代をつとめる著者が現代と禅を結ぶ言葉を道元の教えから探る。文庫判。
笑う禅僧「公案」と悟り 安永祖堂著 講談社 798円
著者は天龍寺国際禅堂師家で花園大学教授。公案集『無門関』を「シアトルのイチローはゼン・フェイス」などと斬新な切り口から読み解く。新書判。
日本的 玄侑宗久著 海竜社 1500円
作家で福島県の臨済宗妙心寺派住職が問うこの国のかたち。「ノイズの中の神」「吾れ唯だ足るを知る」「達磨さんの心―ただ見よ、そして現せ」他。
ほんとうは大事な「お葬式」 村越英裕著 大法輪閣 1785円
本誌別冊に連載中の臨済宗妙心寺派住職による葬儀文化論。なぜ人類はお葬式をするようになったのか、死者の旅路についてなど分かりやすく解説。
「脳」を変える「心」 シャロン・ベグリー著 バジリコ 1890円
人間の心と脳神経は、いかに相互作用するのか。ダライ・ラマ十四世と神経科学者が、仏教と最先端科学の立場からディスカッションした記録が一冊にまとめられた。翻訳は茂木健一郎。
花と死者の中世 中島渉著 解放出版社 1785円
「キヨメとしての能・華・茶」が副題。仏教と縁の深い古典芸能は中世被差別民が創出した宗教文化だった。芸術の背景にあるケガレとキヨメの意識を分析。「石立僧と山水河原者」など。
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