[月刊『寺門興隆』 2011年5月号より転載]
新アジア仏教史 全十五巻 奈良康明他編 佼成出版社 全巻揃い60000円
インドから日本に至るまでの壮大な仏教史の全貌を、現代の仏教学の第一線に立つ研究者と執筆陣によって明らかにしたアジア仏教史十五巻の完結。最終巻テーマは『現代仏教の可能性』。
神仏と儀礼の中世 舩田淳一著 法藏館 7500円
神仏習合は中世社会にどのように定着していったのか。南都戒律復興など戒律運動と、春日大社や比叡山の山王神の関わりなどに着目し、仏教儀礼を通じて神仏習合が行われた実態を解明。
鎌倉期禅宗思想史の研究 松波直弘著 ぺりかん社 6000円
「〈日本禅宗〉の形成」が副題。鎌倉時代に教団として確立された日本禅宗教団の成立過程において、中国・宋朝禅はいかに受容されたのか。道元、円爾の思想を中心に思想史を読み解く。
原始仏典 中村元著 筑摩書房 1300円
仏教思想学の大家が生前、テレビやラジオで行った連続講義を中心にまとめた原始仏典の入門書。「スッタニパータ」などの経典が説かれる。文庫判。
いきなりはじめる仏教生活 釈徹宗著 新潮社 590円
なぜ現代社会は、生き難いのか。宗教学者で浄土真宗本願寺派住職が苦を生み出す原因を仏教の視点から解体する。「宗教の本質ってなんだろう」「近代という煽りの装置」他。文庫判。
明恵 和歌と仏教の相克 平野多恵著 笠間書院 9000円
鎌倉時代の華厳宗僧侶・明恵(1173~1232)は、歌人としても知られる。明恵の歌に注目し、仏教と和歌の関わり、思想的変遷を辿る研究書。「心遣りの歌」「明恵の西行思慕」他。
本願寺法と憲法 平野武・本多深諦著 晃洋書房 4500円
全国約一万カ寺を擁する巨大教団・浄土真宗本願寺派。その寺院を統制する寺法・宗制・宗法はどのように作られたのか。明治政府の宗教政策、戦後の憲法改正を視野に入れて歴史を辿る。
四国遍路 星野英紀・浅川泰宏著 吉川弘文館 1700円
今なお多くの人を惹き付ける四国遍路の魅力はどこにあるのか。平安時代の起源から、現代までの遍路の歴史、遍路の変遷や接待文化などに注目する。
山岳修験への招待 宮家準著 新人物往来社 1400円
山伏体験やパワースポットなど修験道が注目されている。研究者が日本の代表的な霊山を取り上げ、その歴史と行場の特徴を解説した修験道入門書。
現代の「女人禁制」性差別の根源を探る 解放出版社 2400円
編者は奥駆け修験道の聖地、奈良・大峰山の女人禁制開放に取り組む市民グループ。女人禁制の背景を、各国の宗教や女性差別の歴史などから論じる。
空海「折れない心」をつくる言葉 池口恵観著 三笠書房 571円
副題は「『穏やかに』『強く』生きる名僧の智恵」。実践的な多くの言葉を残した空海。鹿児島の高野山真言宗最福寺住職が宗祖の言葉を説く。文庫判。
親鸞 絵でみる伝記 梅田紀代志作 PHP研究所 2000円
師・法然の教えを突き詰めて阿弥陀信仰に辿りついた親鸞。求道の生涯を子供向けに画家が描き下ろした現代絵伝。「比叡山での研学修行時代」など。
いのちの問答 藤澤克己著 幻冬舎 1200円
著者は「自殺対策に取り組む僧侶の会」代表の本願寺派僧侶。自死の相談を受けた往復書簡、自死遺族との交流など、現代の苦に向き合う体験を綴る。
なぜ、いま禅なのか 立花大亀著 里文出版 1500円
副題は「『足る』を知れ!」。平成十七年に百七歳で遷化した臨済宗大徳寺派大本山大徳寺住職の説法集。「混迷の時代にいかに自己を確立するか」他。
平和の祈りを行動の波へ 日本宗教者平和協議会編 本の泉社 600円
昭和三十七年、第一回世界宗教者平和会議を機に立ち上げられた日本宗教者平和協議会。核兵器廃絶や信教の自由を求め活動してきた歴史を振り返る。
天翔ける白鷗 児玉修著 思文閣出版 1600円
臨済宗佛通寺派大本山佛通寺の開山、愚中周及(1323~1409)を主人公にした歴史小説。生涯、権力に依らず坐禅に生きた禅僧の歩みを辿る。
本当にわかる宗教学 井上順孝著 日本実業出版社 1500円
結婚式や葬儀などの儀礼をはじめ、経済活動や国際紛争まで社会に起きる事象の背景には宗教がある。仏教・キリスト教・イスラム教など主な宗教の特徴をふまえ、宗教と社会の今を解説。
生涯発達における死の意味づけと宗教 ナカニシヤ出版 5200円
著者は国立精神・神経医療研究センター・自殺予防総合対策センターの川島大輔研究員。老年期や人生終末期における死の意味づけと宗教の役割をナラティブ死生学という視点から論じる。
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