[月刊『寺門興隆』 2011年7月号より転載]

中世南都仏教の展開 追塩千尋著 吉川弘文館 11000円
鎮護国家の祈願に奉仕した奈良時代の南都仏教は、中世とどう連動していくのか。転換期の日本仏教を、当時の僧侶と寺院の動向から明らかにする研究書。「戒律復興に至る必然性」など。



大乗仏教の深層心理学 岡野守也著 青土社 2200円
フロイトやユングより遥か昔に深層心理学を究めていたのが仏教だった。千五百年前に書かれた唯識思想の体系的理論書『摂大乗論』を日本仏教心理学会長が現代人向けに平易に解説する。



仏教図像の研究 図像と経典の関係 小山満著 向陽書房 13000円
仏教伝来の途で経典の世界を人々はいかに図像化したか。曇曜五窟と『法華経』や敦煌窟頂壁画と『弥勒経』、奈良の中宮寺天寿国繍帳と『法華経』など図像と経典の関連を読み解く。



密教美術の歴史と文化 真鍋俊照編著 法藏館 9800円
アジア・日本の密教文化と歴史を密教学・仏教学・図像学・日本史学の諸分野の研究者(森雅秀、武内孝善、内田啓一、頼富本宏、立川武蔵、ドナルド・キーン他)が論じる学術論文集。



現代語訳 浄土三部経 浄土宗総合研究所編 浄土宗 1400円
『無量寿経』『観無量寿経』『阿弥陀経』の三部を収める『浄土三部経』を法然上人八百年大遠忌を記念し、手にとりやすいサイズで現代語に訳す。



般若心経の本 名取芳彦著 オープン・エンド 1500円
「読めば心がフッと楽になる」が副題。『般若心経』の基礎知識からその心までを東京の真言宗豊山派密蔵院住職が分かりやすく説く。お経CD付き。



熊野観心十界曼荼羅 小栗栖健治著 岩田書院 9500円
熊野比丘尼が絵解きに使った熊野観心十界曼荼羅は、近世社会で最も人気を博した地獄絵図だった。那智参詣曼荼羅や浄土双六など関連資料と共に、説かれた物語や絵解きスタイルを紹介。



宮古島の信仰と祭祀 岡本恵昭著 第一書房 8000円
琉球列島の中で古神道の姿を色濃く残す宮古島。同島の臨済宗妙心寺派祥雲寺住職が、自らの生まれ育った島の信仰行事を詳細にまとめた民俗研究書。「宮古島における他界観念の構造」他。



現代文 説教の秘訣 大須賀順意著 国書刊行会 3800円
明治時代に節談説教者として活躍した僧侶による、説教がうまくなるコツを書いた指南書を、東京の真宗大谷派本浄寺・府越義博住職が現代語訳化。



蒼天の龍 池口恵観著 高城書房 2000円
戦国時代、島津軍の支配に激しく抵抗したのが薩摩の修験者。その一族の血を受け継ぎ、炎の行者として活躍する住職が自らのルーツを時代小説に。



日本近世の宗教と社会 菅野洋介著 思文閣出版 7800円
奥州や関東を中心に戦国期以降の仏教・修験道・陰陽道と地方とのかかわりを日光東照宮や上野・寛永寺などの幕府ゆかりの寺社を視野に入れて考察。



吉野修験 大先達の遺訓 五條順教著 大法輪閣 1500円
奈良の金峯山修験本宗第二代管長を務め、千三百年の歴史ある大峯奥駆け道の復活に励んだことでも知られる僧侶が遺した現代へのメッセージ集。



マイ仏教 みうらじゅん著 新潮社 680円
『見仏記』などで仏像ブームを巻き起こしたイラストレーターが自らの青春時代と仏教との出会いを振り返り、その魅力を語るエッセイ集。新書判。



石仏探訪必携ハンドブック 日本石仏協会編 青娥書房 1000円
地蔵や如来、観音、菩薩などの諸仏から道祖神まで、野には様々な石仏がある。旅先のその場で、石仏の種類が分かる携帯用のメモ付きガイドブック。



はじめて学ぶ宗教 島薗進他著 有斐閣 1900円
不安の時代、宗教が見直されている。宗教の持つ力を可能性と問題点の双方向から日本の宗教、ガンジーや宮沢賢治など具体的事例をふまえ解き明かす。



瞑想する脳科学 永沢哲著 講談社 1800円
近年、人間の脳のはたらきに及ぼす瞑想の効能が注目されている。チベット仏教専攻の宗教人類学者が、ヴィパッサナー瞑想などに着目し、宗教的行為と科学を結びつける可能性を探る。



チベット仏教が教える怒りの手放し方 築地書館 1500円
怒りを鎮める方法は洋の東西でどう変わるのか。チベット仏教に深く傾倒したコロンビア大学のロバート・A・F・サーマン教授が、仏教の説く怒りの手放し方を解説。翻訳・屋代通子。



比較宗教学「いのち」の探求 田中かの子著 北樹出版 3100円
人類はいのちをいかに捉えてきたか。世界の諸宗教を比較し、その普遍性と違いを浮き彫りにする。「人間の脳裏に蓄積した多次元的時間の還元」など。





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