[月刊『寺門興隆』 2011年8月号より転載]

法然伝承と民間寺院の研究 平祐史著 思文閣出版 9000円
約七千カ寺を擁する浄土宗。全国に広がる同宗寺院は近世社会において、いかに発展してきたのか。京都の村落寺院などを中心に、浄土宗教義の変容や民俗信仰との関係から浮き彫りに。



修験道の室町文化 川崎剛志編 岩田書院 5700円
室町時代、京都で修験道の復興が文化芸能を巻き込む形で展開していたことを明らかにする論文集。熊野宮曼荼羅などから、思想の転換期を読み解く。



新編中世高野山史の研究 山陰加春夫著 清文堂出版 11000円
世界遺産としても名高い高野山は実は廃寺の危機に直面したことがあった。中世金剛峯寺教団組織と荘園の関係、鎌倉時代の森林保護政策など知られざる高野山史に光をあてた研究論文集。



誰でもわかる維摩経 菅沼晃著 大法輪閣 1900円
資産家の息子が仏弟子を論破するスタイルで大乗仏教の核心を説く『維摩経』。ドラマティックな世界をインド哲学の研究者が分かりやすく解説する。



神仏霊験譚の息吹き 中前正志著 臨川書店 2600円
涙を流す不動尊、髪を手に巻きつけた地蔵など異形の仏像は少なくない。「身代わり」をキーワードに中世から近代の各地の霊験譚を収集、分析する。



戦国宗教社会=思想史 川村信三著 知泉書館 7500円
人口一千万人に満たない十六世紀の日本で、わずか十年の間に四十万人近い信者を獲得したキリスト教。短期間の興隆の背景に何があったか。仏教教団や伝統思想との関わりから明らかに。



チベットの仏教美術とマンダラ 名古屋大学出版会 12000円
インドの影響を受けながらも独自の宗教文化を発展させたチベット仏教。その豊饒の世界を、密教美術研究者の森雅秀がアジア仏教史の中に位置づけ、特徴を明らかにする。図版多数収載。



秘史 密教のすべて 正木晃編 新人物往来社 1800円
副題は「空海伝説と禁断の秘術」。インドからチベット、そして日本の空海まで。密教世界の実像をマンダラ研究者が紹介。「チベット密教の奥義」他。



曹洞宗の戦争 一戸彰晃著 皓星社 4300円
著者は青森県の曹洞宗雲祥寺住職。戦時中、国策に協力した海外開教師の僧侶は何を考えていたのか。秋田出身の同宗僧侶・中泉智法師(1878~1943)が綴った日誌から読み解く。



キッパリ生きる! 仏教生活 釈徹宗著 技術評論社 1580円
瞑想、念仏、坐禅、お布施など仏教には身心を調える膨大な〝技法〟が含まれている。日常的に誰でも実践できる仏教トレーニング方法を紹介する。



覚悟の決め方僧侶が伝える15の智慧 扶桑社 1500円
東日本大震災、原発事故に我々はどう向き合うべきか。宗派異なる僧侶五人(河野太通、南直哉、釈徹宗、田口弘願、小池龍之介)が3・11後の社会に対し、仏教の観点から語った論説集。



生かして生きる 清水谷孝尚著 講談社 1400円
国内外から年間三千万人が訪れる東京・浅草寺。戦後、焼け野原からの復興を精神的に支えた同寺の歩みと魅力を九十二歳の浅草寺貫首が語る法話集。



「形」でわかる仏像入門 西村公朝著 佼成出版社 1400円
仏像に表現されているものは何か。三十三間堂の十一面千手観音千体像はじめ、約千三百体の仏像修復に携わった故・天台宗住職が説いた仏像入門。



鎌倉古社寺辞典 吉川弘文館 2700円
鎌倉の歴史散歩に使えるハンディタイプの古社寺ガイドブック。歴史ある約二百五十カ寺を、エリア別に由緒、歴史、年中行事など分かりやすく紹介。



ポックリ往生パワースポット全国寺社完全ガイド 青志社 1500円
中高年を惹き付けるポックリ寺やぼけ封じ寺は、まさに現代のパワースポット? 病気封じや長寿を願う全国の寺社を紹介した異色のガイドブック。



教科書の中の宗教 この奇妙な実態 藤原聖子著 岩波書店 800円
宗教教育の弊害が問われる日本社会。そもそも公教育で、果たして中立・客観的に宗教を教えることは可能なのか。海外の宗教教育論争も参考に戦後日本の教科書における宗教を検証。新書判。



映像にやどる宗教、宗教をうつす映像 新井一寛他編 せりか書房 2800円
世界各国の宗教はいかにメディアを戦略的に使っているのか。イスラム過激派のプロパガンダ映像や人々の苦しみと宗教性の接点などを映像から分析。



現代宗教2011 国際宗教研究所編 秋山書店 2200円
特集は「現代文化の中の宗教伝統」。無宗教を標榜する現代人も宗教とどこかで関わっている。昨今の新たな宗教現象から、社会の中の宗教を問い直す論集。「アニメの中の伝統宗教」など。





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