[月刊『寺門興隆』 2011年10月号より転載]

インド密教の観自在研究 佐久間留理子著 山喜房佛書林 17000円
インドにおける観自在菩薩信仰の変遷をふまえ密教的観自在について文献学・図像学・宗教学の視点から総合的に考察した研究論考。日本と東アジア諸国における観自在の相違も明らかに。



自己をわすれる 生き方としての仏教 奈良康明著 東京書籍 1500円
本誌連載の駒澤大学名誉教授が、仏教は「生きる道を歩く」ことだとして仏教思想のエッセンスを現代人向けに解説した講義集。「慈悲が先か、智慧が先か」「仏教の『社会性』」など。



仏法僧とは何か 藤村安芸子著 講談社 1500円
副題は「『三宝絵』の思想世界」。源為憲が永観二(九八四)年に、若くして仏門に入った尊子内親王に献上した仏教説話集『三宝絵詞』。同書に記された仏法僧の姿から日本仏教を読む。



石造物の研究  藤澤典彦編 高志書院 6000円
「仏教文物の諸相」が副題。各地に伝わる五輪塔や板碑などの石造物を、全国の学芸員がその歴史・民俗的意義について調査研究した論文集。「計画寸法から見た五輪塔の定型化」など。



足利義満と禅宗 上田純一著 法藏館 2000円
室町幕府第三代将軍・足利義満は大陸の明との貿易を開いたが、通商の実際を担っていたのは禅僧たちだった。中世の外交を支えた禅宗の実態に迫る。



維摩経 梵漢和対照・現代語訳 植木雅俊訳 岩波書店 5500円
世俗の中に、仏教の理想を実現することの意味を説いた初期大乗仏典『維摩経』の現代語訳化。二十世紀仏教学史上最大の発見とされたサンスクリット語原典に依拠し、梵文・漢訳も併記。



葬儀と日本人 位牌の比較宗教史 菊地章太著 筑摩書房 760円
なぜ東アジアでは、先祖供養がこれほどまで発展したのか。葬儀と位牌に着目し、仏教、儒教、道教の影響を比較しながら日本人の死生観のルーツを探る。「位牌文字便覧」など。新書判。



摂折論争がわかる本 東京都西部教化センター 日蓮宗新聞社 2000円
日蓮聖人の本懐は折伏か、摂受か。近年、今成元昭・立正大学名誉教授の問題提起などによって宗内で一大教学論争が起き、大きな注目を集めた摂折論の骨子と全容が一冊にまとめられた



3・11後の世界の心の守り方 ディスカバー21 1000円
「『非現実』から『現実』へ」が副題。本誌連載の山口・正現寺の小池龍之介住職が東日本大震災後をどう生きるかについて「私たちの幸福とは何だったか」など心の持ち方を綴った法話集。



みんなに読んでほしい本当の話 第三集 興山舎 1429円
本誌別冊で好評の曹洞宗長寿院・篠原鋭一住職の連載単行本化、第三弾。副題は「おしょうさんも心うたれた25の生き方」。東日本大震災の支援活動など二十五話を収録。



ブッダ・高僧の《名言》事典 大法輪閣 1600円
人生に迷った時に読む言葉として、ブッダはじめインド・中国・日本の高僧の名言約二百五十を「真理」や「生き方」などの項目別に編纂した語録集。



心と体を整える朝坐禅 金嶽宗信著 大和書房 648円
都会のサラリーマンが出勤前に活を入れにくる東京・渋谷の臨済宗大徳寺派香林院の早朝坐禅会。同寺住職が、朝坐禅の方法と効能を説く。文庫判。



禅 シンプル発想術 枡野俊明著 廣済堂出版あかつき 1300円
庭園デザイナーとして国内外の庭作りを手がけ、ニューズウィーク日本版の「世界が尊敬する日本人百人」に選ばれた横浜の曹洞宗住職による法話集。



生きていく 救われていく 石上智康著 徳間書店 1400円
東日本大震災後を生きる道を、千葉県の浄土真宗本願寺派住職が仏教詩で表現した。挿し絵は被災地の子供らの手によるもの。「この愚身を任す」他。



念佛の烽 大い成る法然 別府空由著 奈良新聞社 1800円
著者は奈良の浄土宗正福寺住職。正福寺史を中心に、歴史研究に力を入れる著者が、古代史と自坊のかかわり、法然上人はなぜ奈良へ下向したのかなどについて様々なテーマで綴る法話集。



入江泰吉写真集 仏像の表情 新人物往来社 3000円
昭和の名写真家・入江泰吉が撮影した仏像写真の名作が半世紀ぶりに復刊された。興福寺の阿修羅像や秋篠寺の伎芸天像などが臨場感をもって迫る。



強欲の宗教史 P・A・ティックル著 築地書館 1200円
なぜ人は欲しがるのか。米国の宗教学者が仏教、キリスト教、ヒンドゥー教における「貪欲」を探り、ブリューゲルの絵画などから欲望の世界を論じる。「強欲という名の伝染病」他。





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