[月刊『寺門興隆』 2012年8月号より転載]

奈良仏教と古代社会 冨樫進著 東北大学出版会 3600円
「鑑真門流を中心に」が副題。鑑真一門がもたらした護国仏教思想とはどのようなものだったのか。鑑真高弟・法進の著した戒律註釈書を中心に、唐仏教の受容と政治に与えた影響を考察。



僧寺と尼寺 森郁夫・甲斐弓子共著 帝塚山大学出版会 2800円
飛鳥時代、日本の僧侶第一号は女性だった。仏教伝来当初の僧寺と尼寺は政治的、思想的にそれぞれいかなる役割を果たしたのか。知られざる古代寺院の謎を探る。「近接した二寺」他。



花祭りの起源 山﨑一司著 岩田書院 5400円
副題は「死・地獄・再生の大神楽」。修験道が色濃く影響した奥三河の花祭りは、折口信夫ら多くの研究者を魅了してきた。その成り立ちと宗教的意味を江戸時代の記録をもとに考察した。



お盆のはなし 蒲池勢至著 法藏館 1200円
日本の仏教行事に欠かせない盂蘭盆。起源、成り立ち、真宗門徒のかかわりまで真宗大谷派住職が簡潔にまとめる。「法会から庶民の行事へ」など。



仏像のかたちと心 金子啓明著 岩波書店 1900円
「白鳳から天平へ」が副題。中宮寺半跏思惟像、法隆寺阿弥陀三尊像、興福寺阿修羅像はなぜ魅力的か。国宝阿修羅展を手がけた美術史家の仏像論。



なぜ生命は捧げられるか 原田信男著 御茶の水書房 2800円
豊饒や厄除けを願って祭祀の場で動物を供える供儀を、大陸や朝鮮半島と比較しながら日本の殺生罪業観の影響をふまえて特徴を浮き彫りにする。



恵信尼公の語る親鸞聖人 宇野弘之著 国書刊行会 1800円
越後の恵信尼が京都に暮らす末娘にあてて綴った「恵信尼文書」には妻から見た親鸞の姿が見える。書簡を通じて親鸞思想に迫る。「三大法難」など。



瓦が語る日本史 山崎信二著 吉川弘文館 3200円
わが寺の瓦はどんな系譜を持っているか? 大陸伝来の造瓦技法が日本独自のスタイルで発展した道程を、寺院や城郭の瓦や鬼瓦から分析し、瓦工集団の発展や特徴を明らかにした論考。



蝉丸Pのつれづれ仏教講座 蝉丸P著 エンターブレイン 1400円
インターネットの動画サイトで「仏教講座」を開講するなど、メディアを使った新布教で若者の人気を呼ぶ青年住職による仏教入門書。「あの日聞いた丸儲けを僕はまだ知らない」他。



「病」を包む、お見舞い言葉 三橋尚伸著 講談社 1300円
病を得た人になんと声をかけたらよいのか。真宗大谷派僧侶であり、カウンセラーとして医療現場に足を運ぶ著者がお見舞いの心得から注意点までを自らの経験に基づいて綴った法話集。



ただ坐る生きる自信が湧く一日15分坐禅 ネルケ無方著 光文社 820円
著者はドイツ生まれの曹洞宗安泰寺住職。来日後は苦難の生活を経て現在、兵庫県の自坊で自給自足生活を送る。坐禅の魅力を語る法話集。新書判。



禅が教えてくれる美しい人をつくる「所作」の基本 幻冬舎 1200円
著者は庭園デザイナーでもある横浜の曹洞宗建功寺の枡野俊明住職。美しい姿を作る姿勢や呼吸法、所作について指南する。「風呂敷を使おう」他。



山をはしる 1200日間山伏の旅 井賀孝著 亜紀書房 2500円
スポーツ誌で格闘家を撮り続けてきた写真家が修験道に魅了された。足掛け三年の山伏修行ルポ。「八海山に行者あり」「富士山に登る理由」他。



利休の茶を問う 立花大亀著 世界文化社 2000円
百五歳で遷化した元・臨済宗大徳寺派大本山大徳寺住職が敬慕する利休の茶について積年の思いを綴った茶道論。「茶道は茶による宗教である」など。



三井寺に眠るフェノロサとビゲロウの物語 宮帯出版社 1900円
著者はフェノロサ研究著作で知られる山口靜一。ボストン美術館が海外屈指の日本美術コレクションを可能にした理由を日本の僧侶との交流に辿る。



法隆寺建築の設計技術 溝口明則著 鹿島出版会 4200円
世界最古の木造建築、法隆寺。千三百年の歴史を経て現存する理由とは。枝割制や木割書を手がかりに当時の計画理念や設計技法の立体図を構築する。



江戸東京再発見ぶらりスケッチ散歩 田中ひろみ著 東京堂出版 1800円
幾たびもの震災や火災、戦災に遭った東京だが今なお寺社を中心に多くの史跡が残る。『読売新聞』に連載されていた町歩きガイドをまとめたもの。



マインドコントロール 紀藤正樹著 アスコム 952円
「あなたのすぐそばにある危機!」が副題。カルト教団から身近な占い師まで。人はなぜ騙されるのか。統一教会など被害者側弁護士が警鐘を鳴らす。





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