[月刊『寺門興隆』 2013年3月号より転載]

ブッダから、ほとけへ 立川武蔵著 岩波書店 2900円
副題は「原点から読み解く日本の仏教思想」。仏教といえば日本人には、ほとけのイメージが浸透しているが、本来は悟りを目的とした個の教えだった。仏教思想史研究者がその変遷を解説。



仏教は宇宙をどう見たか 佐々木閑著 化学同人 1800円
「アビダルマ仏教の科学的世界観」が副題。仏教思想を体系的にまとめた世親の『倶舎論』から、超常現象を排して因果の関係で展開する釈尊の世界観と、現代科学の相違が探られている。



曼荼羅図典 染川英輔図版、小峰弥彦他解説 大法輪閣 7000円
日本画家による白描下図全尊の挿し絵に、気鋭の密教研究者四人(小峰弥彦、小山典勇、高橋尚夫、廣澤隆之)が実用的な解説を付した曼荼羅図典がハンディサイズになって刊行された。



シッダールタ G・K・アーナンダ・クマラセリ著 サンガ 3500円
「安らぎと平穏のプリンス」が副題。元ASEAN総書記で現在はマレーシアの大学特任教授が古文献をもとに、釈迦の悟りまでの道程を描いた評伝。



社寺と国有林 福田淳著 日本林業調査会 1905円
日本の国有林の多くが、かつて寺社所有の社寺林だった。京都の旧社寺林管理運営に携わってきた著者が東山・嵐山の国有林を中心に歴史的経緯をふまえ、行政と寺社の今後の連携を考察。



道元とシュタイナー 塚田幸三著 水声社 2800円
シュタイナー教育で知られるドイツ神秘思想家と道元とは共通点があるという。シュタイナーの人智論と道元の『正法眼蔵』から共通基盤が探られる。



現代中国の宗教 川口幸大・瀬川昌久編 昭和堂 5000円
文化大革命まで弾圧されてきた中国の宗教は今や改革開放路線のもと、国民統合の象徴として積極的に当局に制度管理化されているという。仏教や死者祭祀の現状が明らかにされている。



植民地朝鮮と宗教 磯前順一・尹海東編著 三元社 3800円
戦前、日本はいかなる宗教概念のもとで植民地下の宗教政策を進めたのか。当時の仏教、国家神道、キリスト教、シャーマニズムと植民地布教の実態が日韓の研究者により浮き彫りにされる。



敦煌の民族と東西交流 栄新江著 東方書店 2400円
古より東西貿易の要衝として栄えた一大都市、敦煌。仏教文物やシルクロードを往来した僧侶などをはじめ、漢代から唐代の歴史絵巻が描き出される。



薩摩塔の時空 異形の石塔をさぐる 井形進著 花乱社 1600円
薩摩塔は九州西側にのみ分布する謎の石塔仏で中国産の石が使われていることが特徴。仏教美術史研究者が中世の大陸との交流、信仰を考察している。



星の王子さま、禅を語る 重松宗育著 筑摩書房 740円
サン・テグジュペリの『星の王子さま』に禅の思想が描かれている? 英米文学者でもある静岡の臨済宗妙心寺派承元寺住職が説くユニークな禅入門。



どんな命も花と輝け 廣中邦充著 宝島社 1400円
十六年にわたり非行や不登校の少年少女をお寺に受け入れ、衣食住を共にして約八百五十人を社会復帰に導いた愛知県浄土宗西居院住職による法話集。



生きかた 死にかた 友久久雄著 本願寺出版社 800円
浄土真宗本願寺派の布教使でもある児童精神科医が自身の体験やカウンセリング経験を通じて現代社会を生きるヒントと死の受け止め方を説いている。



よきひとの言葉 釡田哲男著 北國新聞社 1800円
曽我量深、金子大榮、正親含英ら念仏者に学んだ富山県の真宗大谷派教願寺住職が教えに出遇わせてくれた三十四人の言葉を味わい深く紹介している。



ホッとひといき川村妙慶のカフェ相談室 川村妙慶著 法藏館 1200円
著者はインターネットのブログを通じた悩み相談の先駆けでもある真宗大谷派の女性僧侶。仕事や恋愛結婚、人間関係など様々な悩みをほぐす法話集。



僧職会計士の経営道 谷慈義著 実業之日本社 1500円
赤字転落した上場企業をわずか三年で経常利益百億円の企業に復活させたユアサ商事最高顧問が、仏教にこそ会社を強くする哲学があると綴っている。



国宝五重塔 小田原敏之著 かもがわ出版 2800円
構造も意匠も世界的に傑出した木造建築物である五重塔。なぜ先人はこんな建物を生み出すことができたのか。社寺建築士がその特長を解説している。



新・サンスクリットの実践 菅沼晃著 平河出版社 7000円
サンスクリット語の学習に必要な語彙の用法や表現法の用法を、インドの叙事詩、仏教経典、法典などから約千四百の実例文をあげて解説した学習帳。





Copyright (C) 2006-2013 kohzansha. All Rights Reserved.