[月刊『寺門興隆』 2013年7月号より転載]
法華玄義を読む 天台思想入門 菅野博史著 大蔵出版 5000円
天台智顗が講述した『妙法蓮華経玄義(法華玄義)』は「妙法蓮華経」の経題について五つの面から特色を述べたもの。中国法華経史における同書の位置づけと共にその内容が解説される。
平泉の政治と仏教 入間田宣夫著 高志書院 7500円
初代清衡の非戦の決意と共に建立された中尊寺金色堂、歴代当主による寺院整備など仏教思想による平和社会構築が志された奥州・平泉。都市の成り立ちと仏教との関係が明らかにされる。
日本仏教文学の方法 山田昭善著 おうふう 12000円
著者は中世文学研究の碩学で大正大学名誉教授。全八巻からなる著作集の第七巻は日本仏教文学にかかわる論考集である。「日本仏教における仏典引用と成文法」「弘法大師と文学」など。
千葉氏と妙見信仰 丸井敬司著 岩田書院 3200円
北極星を神格化した妙見菩薩信仰は時代と共に変容を遂げ、中山法華経寺と密接な関係にあった関東武士団千葉氏によって軍神とされた。千葉氏の成り立ちと妙見信仰の関係が考察される。
奈良朝の政変と道鏡 瀧浪貞子著 吉川弘文館 2600円
奈良時代の法相宗僧侶、道鏡は称徳天皇の寵愛を背景に強権をふるい、宇佐八幡宮神託を機に失脚した。怪僧として歴史に名を残すその実像に迫る。
日本の思想 場と器 苅部直他編 岩波書店 3800円
古代から近代まで日本思想の系譜を宗教・民俗・文学・美術などから迫る全八巻シリーズ「日本の思想」。第二巻「場と器」は思想の記録と伝達を神仏の言葉や寺子屋などの事例から見る。
天皇制国家と「精神主義」 近藤俊太郎著 法藏館 2800円
明治の僧侶、清沢満之と門下によって担われた「精神主義」運動とは何だったか。戦争、大逆事件など当時の社会問題との対応から浮き彫りにされる。
阿蘇カルデラの地域社会と宗教 清文堂出版 9500円
編者は熊本大学の吉村豊雄教授と春田直紀准教授。火の国の象徴で信仰の対象とされてきた阿蘇山を取り巻く宗教空間とは何か。歴史的経緯から地域社会の成り立ちまでが解き明かされる。
仏教とカウンセリングの理論と実践 友久久雄編 自照社出版 3500円
現代社会の悩みに仏教者はどう向き合うか。釈尊の対機説法がカウンセリングの「傾聴」にかなっていることが寺院での実践活動報告から示される。
いま知っておきたい霊魂のこと 正木晃著 NHK出版 1400円
人は死んだらどこへ行くのか。お葬式や仏壇は何のためにあるのか。誰もが気になる霊魂の行方が宗教学の立場から易しく語られる。絵・川村易。
もう一つの親鸞像『口伝鈔』講義 義盛幸規著 大法輪閣 2400円
本願寺三世の覚如(1270~1351)が集めた親鸞の言行録をまとめた『口伝鈔』。二十一カ条からなる同書を読み解き真宗の教えが説かれる。
河口慧海著述拾遺上巻 河口慧海著 高山龍三編 慧文社 8000円
日本人で初めてチベット・ラサ入りを果たした河口慧海。生前の著述・対談・手紙・随筆関係文書が上下二巻に分け収録された。下巻は今夏刊行予定。
現代訳 無門関 禅問答四十八章 学生社 1600円
中国宋代の禅僧、無門慧海が編んだ四十八篇の公案集『無門関』。原文・書き下し文に加え、仏教学者の故・中村元の解説が付される。魚返善雄訳。
千光燦々 栄西の道 宮脇隆平著 禅文化研究所 1300円
日本臨済宗の祖、栄西は二度の入宋を果たし臨済宗黄竜派の禅と戒を受け、日本で精力的に禅を広めた。国内外の広範囲な足跡がまとめられている。
禅が教える「接心」のすすめ 浅井義宣著 扶桑社 1400円
昭和十一年、現・双日の創業者である岩井勝次郎が大学生のための参禅道場として開いた京都・長岡禅塾。三代目の塾長が接心の意義を説いている。
鈴木大拙 最終講義 禅八講 角川学芸出版 1800円
国内外で禅の普及に尽力した仏教学者、鈴木大拙の知られざる最終講義と戦後の海外布教期に行われた七つの講演・講義収録。常盤義伸編、酒井懋訳。
宗教に揺さぶられた日本史 武光誠著 河出書房新社 760円
「宗教勢力は、いかに時の権力と闘い、どう結託したか」が副題。仏教伝来から明治の廃仏毀釈まで宗教と権力の関係と影響を辿る宗教史。新書判。
ミャンマーで尼になりました イーストプレス 1000円
著者は仙台の新寺“みんなの寺”の天野和公住職夫人。仏教への探究心やみがたくミャンマーの瞑想センターへ単身飛び込んだ日々が漫画で綴られる。
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