[『月刊住職』 2013年12月号より転載]
中国唯識思想史研究 吉村誠著 大蔵出版 12000円
「玄奘と唯識学派」が副題。命を賭して玄奘三蔵がインドを目指したのはなぜか。中国唯識思想史を玄奘やその弟子たちの著作などの比較を通じて考察している。「摂論学派の九識説」他。
巡礼の歴史と現在 四国遍路と世界の巡礼 岩田書院 7900円
現代も多くの人を惹きつける四国遍路とは宗教的にどのような特徴を持つのか。歴史的変遷や世界の他の巡礼との比較などを行った論考集。愛媛大学「四国遍路と世界の巡礼」研究会編。
法然上人絵伝の研究 中井真孝著 思文閣出版 9500円
法然上人の生涯と事績を描いた『法然上人絵伝』は多くの種類がある。絵伝の系譜、知恩院本『法然上人行状絵図』の論考、専修念仏に先立つ百万遍念仏考など著者による長年の研究成果。
真宗民俗史論 蒲池勢至著 法藏館 8000円
他宗派とは異なる真宗特有の民俗とは何か。寺檀関係や葬送儀礼の実態、民俗学の視点から見た名号と御文などを通じて真宗門徒の信仰を明らかにしている。「真宗門徒の村と民俗」他。
中近世京都の祭礼と空間構造 本多健一著 吉川弘文館 10000円
古都・京都に伝わる御霊祭や今宮祭、踊り念仏の六斎念仏などはいかに生まれ、変遷を遂げてきたか。上京、西陣、京都郊外の祭礼とその構造が中世から近世に至る姿から明らかにされる。
科学するブッダ 犀の角たち 佐々木閑著 角川学芸出版 800円
科学と仏教に対する人間活動には意外にも共通点がある? 仏教学者が二つの学問の関係性を明らかにしている。「脳科学と人間化の関係」他。文庫判。
往生要集を読む 中村元著 講談社 960円
インド仏教思想にはない地獄極楽の対立概念を日本人が持つ背景に『往生要集』の影響があるという。源信の思想とインド仏教原典の比較で日本浄土教の特徴が明らかにされる。文庫判。
熊野信仰の世界 その歴史と文化 豊島修著 慶友社 2600円
熊野を訪れると極楽往生できる―。古より民衆信仰に支えられ『熊野観心十界図』など絵解きも盛んに行われてきた紀伊山地・熊野信仰の実相を最新の研究成果をもとに解明を試みたもの。
仏教・真宗と直葬 葬送の歴史と今後 北塔光昇著 自照社出版 1000円
葬儀を行わず荼毘にふす「直葬」が増える時代の布教をどうするか。葬送儀礼と追善思想の歴史的展開を辿りながら今後の伝道方法が探られる。今年度の浄土真宗本願寺派布教講会講本。
葬式仏教正当論 仏典で実証する 鈴木隆泰著 興山舎 2400円
気鋭の仏教学者がインド原典に基づき従来の日本仏教批判を明解に論破し、現代の葬式仏教の正当性を初めて論証した画期的な書。本誌連載をもとに加筆編集したもの。
坐ればわかる 大安心の禅入門 星覚著 文藝春秋 720円
曹洞宗大本山永平寺で三年間の修行を経て現在、ドイツ・ベルリンで修行中の若き禅僧による禅的生活のすすめ。「五感がひらく体験」など。新書判。
戦場の宗教、軍人の信仰 石川明人著 八千代出版 2100円
平和を祈る心を持ちながらも真逆の行いをするのが戦場だ。従軍宗教者や軍人と信仰の関係について考察したもの。「軍隊のなかの聖職者たち」他。
仏像の顔 形と表情をよむ 清水眞澄著 岩波書店 720円
「いいお顔をしている」仏様ってどんな顔なのか。三井記念美術館館長が古代から鎌倉時代の仏像の変遷を辿りつつその造形美を論じている。新書判。
茶席で役立つ禅語ハンドブック 朝山一玄著 淡交社 1400円
茶席の第一の道具とされる掛物によく書かれる禅語約四百語を、島根県の臨済宗妙心寺派観音寺住職が禅宗と茶の湯の視点から説いている。文庫判。
文学者 三島由紀夫と仏教 海野孝憲著 山喜房佛書林 1500円
遺作『豊饒の海』には輪廻転生の思想が反映されている。仏教研究者が作品に描かれた仏教と三島の宗教観を論じる。「『おぞましい』唯識理解」他。
お墓の社会学 槇村久子著 晃洋書房 3500円
少子高齢化が進む日本社会において終の棲家は今後どう変わっていくのか。諸外国の事例を紹介しつつ、葬儀とお墓の現状とこれからを分析している。
創業一四〇〇年 金剛利隆著 ダイヤモンド社 1500円
寺院建築業の金剛組は聖徳太子の命を受けて始まった世界最古の会社。著者はその三十九世社主。創業以来の教えと苦難の歴史を知ることができる。
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