[『月刊住職』 2014年5月号より転載]
全訳ツォンカパ 中論註『正理の海』 起心書房 16000円
縁起と空を明らかにした龍樹の『中論』をチベット仏教ゲルク派の祖、ツォンカパが説いた大著が平易な日本語で訳された。巻末には『縁起讃』を付す。クンチョック・シタル、奥山裕訳。
アジャンター後期壁画の研究 中央公論美術出版 29000円
西インドの断崖にくりぬかれたアジャンター石窟群は古代インド壁画の宝庫。五世紀以降に描かれた後期壁画に着目し、実地研究をふまえてその諸相を明らかにした研究論考。福山泰子著。
近世起請文の研究 大河内千恵著 吉川弘文館 13000円
落語の『三枚起請』などで知られる起請文は神仏との誓約と罰文から成る。あまり注目されなかった近世以降における起請文の実態解明が試みられる。
日本仏教入門 末木文美士著 KADOKAWA 1800円
大陸や半島との交流を経て多様な思想を生んだ日本仏教。神仏が支え合う構造、超宗派のダイナミックな展開など日本仏教の全体像が描き出される。
知っておきたい日本仏教各宗派 大法輪閣 1600円
日本仏教の十宗(法相宗、天台宗、真言宗、融通念佛宗、浄土宗、浄土真宗、臨済宗、曹洞宗、日蓮宗、時宗)について、基礎知識や特徴、要点をまとめた入門書。日本仏教史略年表付。
空海読み解き事典 小峰彌彦編著 柏書房 3200円
空海が日本にもたらしたものとは何か。生涯から思想、著作、密教芸術、ゆかりの地などについて、第一線の研究者らが「解説」編と五十音順で引く「用語集」編の二部立てで解き明かす。
栄西〔臨済宗〕 高野澄著 淡交社 1200円
京都を中心に、宗祖七人とゆかりの寺院を紹介するシリーズの第一冊目。臨済宗の開祖、栄西の生涯と教え、京都の臨済宗寺院六カ寺が描かれる。
醒睡笑 全訳注 安楽庵策伝著 宮尾與男訳注 講談社 1700円
落語の原点ともいわれる『醒睡笑』は江戸初期に誓願寺法主の安楽庵策伝が編纂し京都所司代に献呈した笑話集。全8巻42章311話の翻刻文に現代語訳、語注、解説を初めて付した。
皇道仏教と大陸布教 新野和暢著 社会評論社 2700円
「十五年戦争期の宗教と国家」が副題。著者は真宗大谷派僧侶。日中戦争当時、軍と共に大陸侵略に加担した日本仏教の実態を豊富な史料から解明。
カルト問題と公共性 櫻井義秀著 北海道大学出版会 4600円
「裁判・メディア・宗教研究はどう論じたか」が副題。本誌連載中の北海道大学教授がカルト問題の認識における宗教理念と社会秩序の関係性のバランスを問う。「カルトとは何か」他。
現代インドに生きる〈改宗仏教徒〉 舟橋健太著 昭和堂 6200円
インド、カースト制度「不可触民」の人々の間で仏教に改宗する動きが出ているという。若手研究者が、文化人類学の視点から宗教運動の動向を探る。
今、この身で生きる 大河内大博著 ワニブックス 952円
死の恐怖や死別の悲しみを前にどんな言葉をかけられるか。臨床ケアの現場に立つ大阪の浄土宗願生寺副住職が様々な出会いと経験から綴った法話集。
いまを生かされて 大谷光真著 文藝春秋 1200円
六月に退任を控える浄土真宗本願寺派第二十四代門主が、親鸞聖人の『浄土和讃』『高僧和讃』『正像末和讃』を通じて、宗祖の教えを読み解く法話集。
東日本大震災 その時、そして復興へ 本願寺出版社 800円
未曾有の大震災に約一万カ寺を擁する浄土真宗本願寺派はいかに動いたか。宗派の取り組みや、機関紙『本願寺新報』の報道などから記される震災記録。
こころを調えるレッスン帳 仁パブリッシング 1100円
「お坊様が教える!」が副題。若手僧侶たちが恋愛や生きる悩みに答える一口法話集。お寺ヨガや禅ボディワークなどユニークな試みも紹介される。
露の団姫の仏教いろは寄席 露の団姫著 佼成出版社 1400円
天台宗キャンペーンガールとしても活躍する上方の噺家が古典落語『千両みかん』『松山鏡』『時うどん』などと仏教のかかわりを楽しく説いている。
宗教と現代がわかる本 2014 渡邊直樹編 平凡社 1600円
「いつか死ぬ、それまで生きる。」をテーマに掲げホスピスや臨床宗教師、死生観などについて僧侶や詩人、学者、ジャーナリストが多様な視点で論じる。
お線香の考現学 フレグランス・ジャーナル社 1400円
著者の鳥毛逸平氏は正倉院宝物の香りの再現研究なども手がける日本香堂研究室室長。お寺に欠かせないお線香のすべてが専門家の視点で解説される。
|