[『月刊住職』 2015年6月号より転載]
ガナチャクラと金剛乗 静春樹著 起心書房 9800円
インド仏教の後期密教集団的修法、「ガナチャクラ(聚輪)」。儀礼に込められた出家と在家、女性観、反カーストなどの様々な問題を通じ当時の仏教徒のアイデンティティに迫る研究論考。
百済寺院の展開と古代日本 李炳鎬著 塙書房 9500円
百済仏教は日本など周辺諸国にいかなる影響を与えたのか。塑像の造形や伽藍など文化系統の検証を通じて展開と伝播過程が明らかにされる。「飛鳥寺三金堂と日本の初期寺院の源流」他。
中峰明本『山房夜話』訳注 野口善敬他訳 汲古書院 8000円
隠元に連なる中国・元代禅門を代表する名僧、中峰明本が禅門について問答で明らかにした『山房夜話』の初現代語訳。「禅定の禅と達磨の禅との差異」「『華厳経』の十地の説と禅」他。
アジアの社会参加仏教 櫻井義秀他編著 北海道大学出版会 6400円
近現代におけるアジア各地の仏教徒の動向を、政教関係の視座から読み解く論文集。「タイにおける国家介入的な政教関係と仏教の社会参加」など。
お坊さんも学ぶ仏教学の基礎全二巻 大正大学 各1500円
大正大学仏教学科が編纂した学生向けの仏教学入門テキスト。初期仏教から中国大陸への伝来まで「インド編」「中国編」の全二巻にまとめてある。
仏教思想のゼロポイント 魚川祐司著 新潮社 1600円
日本仏教はなぜ「悟れない」のか? ミャンマーでテーラワーダ仏教の教理と実践を学んだ若手仏教研究者が釈尊の「解脱・涅槃」と日本の仏教観の違いを論じる。「『脱善悪』の倫理」など。
寺院消滅 失われる「地方」と「宗教」 鵜飼秀徳著 日経BP社 1600円
人口減、経済格差が広がるなかお寺はどうなるのか。京都の浄土宗寺院の副住職でもあるビジネス誌記者が、地方寺院の危機、住職の挑戦をリポート。
日本仏教 思想のあゆみ 竹村牧男著 講談社 1100円
インドから中国、朝鮮半島を経て日本に伝えられた仏教はいかに特徴的な展開を遂げたか。聖徳太子の思想から南都六宗、平安、鎌倉仏教までその流れと概略が明らかにされる。文庫判。
密教アート入門 真鍋俊照著 筑摩書房 860円
密教は世界をどう認識しているのか。密教文化研究の碩学が、アートというフィルターを通じて曼荼羅や儀礼・修法にこめられた思想を紹介。新書判。
チベット仏教王伝 ソナム・ギェルツェン著 岩波書店 1020円
チベットの仏教伝来と建国の王の物語を観音信仰に基づきまとめた歴史書『ソンツェン・ガンポ物語』は今もチベット人の心に息づく。訳注と用語集を付して邦訳。今枝由郎監訳。文庫判。
清沢満之が歩んだ道 その学問と信仰 藤田正勝著 法藏館 1900円
近代における日本の思想界に大きな影響を与えた真宗大谷派僧侶、清沢満之。40年の短い人生を駆け抜けたその歩みと思想、信仰の本質を紹介する。
お釈迦さまの薬箱 太瑞知見著 河出書房新社 1250円
著者は薬剤師でもある曹洞宗の住職。『律蔵』を通じてお釈迦様の説いた2500年前の健康法を紹介する。「八種のお粥」「肥満とダイエット」他。
禅語 生きぬく力をつける 金嶽宗信著 芙蓉書房出版 1600円
雲収山岳青=煩悩をぬぐえば仏と同じ心になど、東京・広尾の臨済宗大徳寺派香林院住職が禅語の世界を身近なエピソードを交えて説く法話集。
弥勒の来た道 立川武蔵著 NHK出版 1400円
京都・広隆寺の半跏思惟像でも知られる弥勒菩薩。未来仏であり救世主でもある独特の尊格はいかに誕生したのか。その起源と伝播過程が辿られる。
九相図をよむ 山本聡美著 KADOKAWA 1800円
人間の死体が土に還るまでの九段階の変相を描いた九相図は説教の題材にもされた。図像に込められた死生観、無常観が豊富な図版と共に探られる。
高野文学夜話 下西忠・浜畑圭吾著 セルバ出版 1600円
古より多くの文学に登場する弘法大師と高野山。『平家物語』や西行の歌、御詠歌など宗教世界が読み込まれた31の作品を紹介。「芭蕉の話」など。
葬式は誰がするのか 葬儀の変遷史 新谷尚紀著 吉川弘文館 3500円
直葬やホール葬の増加など日本人の葬儀事情と葬送文化が変化している。葬儀のあり方と、その担い手の変遷を民俗学の視点から浮き彫りにする。
宗教学 大田俊寛著 人文書院 1900円
祖先崇拝の論理、宗教の基礎理論、近代の国家・社会・宗教、個人心理と宗教、シャーマニズムの水脈など宗教について体系的に学ぶ30冊を紹介。
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