[『月刊住職』 2017年5月号より転載]

東アジア仏教の生活規則 梵網経 船山徹著 臨川書店 9200円
東アジアの仏教徒の生活規範『梵網経』は中国撰述の偽経とされるが、華厳経の菩薩戒思想を発展させたもの。明確な意図を持って書き換えられた経典の変遷に迫る。未公開資料も収録。



地論宗の研究 金剛大學佛教文化研究所編 国書刊行会 22000円
世親の『十地経論』を主たる研究対象とする地論宗は、中国南北朝期の北朝で隆盛し隋唐仏教に大きな影響を与えた。教学大成者である慧遠に焦点をあて、その思想と歴史を論じた学術書。



日本霊異記の罪業と救済の形象 大塚千紗子著 笠間書院 5800円
罪業と葛藤、聖人の救済が描かれる『日本霊異記』は存在のあり方を探った特異な仏教説話集。文学からのアプローチを通じ日本独自の物語性を明らかにする。「聖徳太子の片岡説話」他。



真言宗社会福祉の思想と歴史 山口幸照著 セルバ出版 2000円
福祉を密教ではどう捉えてきたか。空海の密教思想に基づく社会福祉思想と近代における高野山真言宗、真言宗智山派、真言宗豊山派の社会福祉史。



説経 神戸女子大学古典芸能研究センター編 和泉書院 4500円
説経は闇夜を行くが如き境涯においても、やがて一筋の光明が差し込むことを教え説く物語―。絵解きなど寺社で行われた説経の魅力に国文学、歴史学、宗教学など多分野から迫る。



戦国時代と禅僧の謎 清水眞澄著 洋泉社 2200円
中世の禅林はなぜ将軍権力を支え、外交・軍事・文化政策に関与したのか。戦国時代の実像を室町将軍の側近であった官寺、相国寺・蔭涼軒の禅僧が記した『蔭涼軒日録』から明らかにする。



国家と上座仏教 矢野秀武著 北海道大学出版会 5800円
タイではなぜ仏教と国家が密接な関係を作り上げているのか。国家の道徳教育と一体化した仏教の諸実践に注目し、行政の宗教関連事業からも論じる。



語り継がれた偏見と差別 福西征子著 昭和堂 6000円
「歴史のなかのハンセン病」が副題。古代から現代に至るまで、いかにしてハンセン病に対する偏見と差別意識が日本人に根付いていったか、宗教や政治はどう関わったのかが検証される。



ことばの向こうがわ 安部智海著 法藏館 1100円
副題は「震災の影 仮設の声」。著者は東日本大震災の被災地で仮設住宅訪問活動に取り組んできた本願寺派住職。その活動記録。「仮設住宅の限界」他。



道元 仏であるがゆえに坐す 石井清純著 佼成出版社 1400円
シリーズ「構築された仏教思想」の道元編。道元は中国禅を継承しながらも改変を加えたという視点に立ち、その思想的特徴を駒澤大学教授が説く。



人生は引き算で豊かになる 有馬賴底著 文響社 1280円
臨済宗相国寺派管長が、禅の教えから心穏やかに生きる術を説く法話集。「掴むためには何かを失い、失っているときには何かを掴んでいる」など。



安岡正篤先生と禅 水野隆徳著 明徳出版社 3700円
陽明学者、安岡正篤(1898―1983)は禅をどのように説いていたか。安岡正篤記念館理事で元銀行マン僧侶がその思想について解き明かす。



智恵の系譜 谷寿美著 慶應義塾大学出版会 700円
「ロシアの愛智の精神と大乗仏教」が副題。ロシア哲学のソロヴィヨフの思想〝愛智〟に言及し、聖書世界と大乗仏教に広がる智恵について探る。



石原莞爾 愛と最終戦争 藤村安芸子著 講談社 940円
関東軍参謀として満州事変を主導し、『世界最終戦争論』を著した石原莞爾。日蓮主義に傾倒したその思想の変遷を近代日本と法華経の関係から照射する。



若狭の聖水が奈良に湧く 土岐直彦著 かもがわ出版 800円
「『お水取り』『お水送り』の謎」が副題。東大寺のお水取りは開闢十日前、若狭のお水送りから始まる。元新聞記者がこの二点を結ぶ宗教行事に迫る。



大阪弁訳 法華経 データハウス 1500円
『妙法蓮華経』を大阪弁に口語訳したユニークな本。「自分はアホやと知りなはれ」「超絶ワルも善知識や」他。著者は大阪弁訳『法華経』制作委員会。



あわてんぼうウサギ 中川素子再話 小学館 1400円
釈尊の本生譚「ジャータカ物語」の一篇、正しく物事を見ることを分かりやすく説いたウサギの物語の絵本。絵はモンゴルの絵本作家B・ボロルマー。



辛酸なめ子と寺井広樹の―あの世の歩き方 マキノ出版 1400円
「漫画とリポートでめぐる『死後の世界』」がサブタイトル。臨死体験や生まれ変わり現象の研究など、あの世を語る僧侶、教授などのインタビュー集。





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