[『月刊住職』 2017年9月号より転載]
敦煌寫本『大乘起信論疏』の研究 国書刊行会 8800円
曇延の義疏に先行し、法藏疏にも影響を与えたと考えられる近年の新出資料、敦煌寫本『大乘起信論疏』。全文テクストと訳注を作成し思想史的位置づけを解明。金剛大學佛教文化研究所編。
仏教と酒 不飲酒戒史の変遷について 藤原暁三著 慧文社 6000円
なぜ日本の仏教者は飲酒に寛容なのか。他宗教との飲酒観の比較、経典や宗祖の酒にまつわる著述、過去の禁酒令など日本仏教の不飲酒戒の変遷から考察する。「曹洞禅の排酒者」など。
日本古代の氏族と宗教 日野昭著 和泉書院 3700円
古代氏族伝承研究の泰斗の遺稿論文集。仏教・神祇・道教(神仙思想)など飛鳥白鳳期の宗教文化とその思想が考察される。物部氏の宗教、聖徳太子の信仰世界、白鳳仏教にまつわる卓論。
中世の門跡と公武権力 永村眞編 戎光祥出版 8800円
朝廷や幕府と深い結びつきのあった門跡寺院だが、その実態はいかなるものだったのか。延暦寺、聖護院、大覚寺など法流・貴種・所領支配などの観点から門跡寺院の特質に迫る研究論考。
天皇の即位儀礼と神仏 松本郁代著 吉川弘文館 2800円
天皇陛下の生前退位が話題だが、即位儀礼における正統性や権威はいかに創出されたか。儀式書や聖教を読み解き、儀礼にまつわる神仏と天皇の関係に迫る。「高御座の廬舎那仏」など。
京都地蔵盆の歴史 村上紀夫著 法藏館 2000円
今なお、京都の約八割の町が地蔵盆を行っている。歴史学者が文献とフィールドワークを通じて、地蔵会の発祥から近現代史に至る文化継承の史実を明らかにする。「近代の地蔵会」他。
日本人のこころの言葉 栄西 中尾良信他著 創元社 1200円
宋で臨済禅を学んだ後に、帰国して兼修禅を打ち立てた栄西は、茶祖としても知られる。主著『興禅護国論』を中心に、その思想と生涯が辿られる。
神と仏の日本文化 小峰彌彦著 大法輪閣 1800円
日本人の「和」の精神の源は、神仏習合の文化と「マンダラ的思考」があったと著者は説く。日本人の思惟構造を宗教の視点から詳しい解明を試みる。
親鸞の教化 和語聖教の世界 一楽真著 東本願寺出版 750円
親鸞は人々に浄土真宗をどう伝えたのか。『唯信鈔文意』『一念多念文意』『三帖和讃』、御消息など和文で綴られた著作を通じて、その真意を尋ねる。
無我仏教を語りつぐ 正福寺通信 林寺脩明著 自照社出版 1500円
寺報には、その時代に応じた教化伝道の軌跡が表れる。大阪の浄土真宗本願寺派正福寺前住職が長年発行してきた寺報「正福寺通信」の単行本化。
日蓮紀行 福島泰樹著 大法輪閣 2500円
副題は「滅罪、求道、救国の旅」。歌人でもある都内の法華宗本門流法昌寺住職が日?上人の軌跡をたどり『立正安国論』に込められた思想に迫る。
悉皆成仏による「更生」を信じて 德岡秀雄著 福村出版 1700円
犯罪者の更生は可能か。家庭裁判所調査官補の経歴をもつ社会学者で浄土真宗本願寺派布教使が、社会学と親鸞思想の視点から不信の時代の信を問う。
「悟り」は開けない 南直哉著 ベストセラーズ 815円
自殺を一度も考えない人に、人の痛みは分かるか。恐山菩提寺院代でもある曹洞宗住職が、悟りとは、自己とはについて語る独自の仏教論。新書判。
日本人が忘れた日本人の本質 講談社 860円
宗教学者の山折哲雄と作家の高山文彦が、死生観や天皇制、原発、AI、映画『シン・ゴジラ』など多角的な視点から日本人について対談。新書判。
浄土真宗ではなぜ「清めの塩」を出さないのか 青春出版社 940円
副題は「知っておきたい七大宗派のしきたり」。作家で浄土真宗本願寺派僧侶の向谷匡史師が宗派によって異なる仏事作法のかたちを解説。新書判。
〈ひとり死〉時代のお葬式とお墓 小谷みどり著 岩波書店 780円
社会構成員の個人化が進む時代、直葬や、お墓の無縁化が増え、引き取り手のない遺骨に悩む自治体も出ている。葬送の変化と展望を捉える。新書判。
お遍路は心の歩禅 坂上忠雄著 梓書院 1400円
全長1400キロの四国八十八カ所の遍路道。ノルディック・ウォークインストラクターである著者が全行程を実際に歩いて体感したお遍路の体験記録。
ブータン 国民の幸せをめざす王国 熊谷誠慈編著 創元社 1800円
世界一幸福な国として知られる仏教国ブータンだが、本当に幸福なのか。日本との交流、ブータンの目指す近代化と宗教の関係などから明らかにする。
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