[『月刊住職』 2018年3月号より転載]

三論宗の基礎的研究 伊藤隆壽著 大蔵出版 19000円
般若経の空の思想を論じた三論宗は中国で隋代に最盛期を迎え、日本では法相宗と並んで南都六宗の一翼を担った。日本の仏教思想の基盤を支えた教学が、法会記録や文献研究から解明される。



五山僧がつなぐ列島史 斎藤夏来著 名古屋大学出版会 6300円
副題は「足利政権期の宗教と政治」。外交から文学まで中世の歴史に大きな影響を与えた五山。足利政権の全国支配の鍵ともなった「夷中」の五山僧の役割から中世史像が明らかにされる。



アジア仏教美術論集 中央アジアⅡ 中央公論美術出版 5800円
全12巻からなるアジア仏教美術論集の中央アジア編第2巻はチベット美術研究の最前線。歴史から諸相まで17編の論考を収載。森雅秀責任編集。



聖武天皇と仏都平城京 吉川真司著 講談社 1180円
シリーズ「天皇の歴史」第2巻。8代7人の天皇が即位した平城京は、国家安穏を目指して仏教思想のもとに築かれた仏都でもあった。飛鳥から平城京、平安京への遷都に至るまでを辿る。



梵字字典 小峰智行著 東京堂出版 3200円
梵字について字母51字を含め、仏・菩薩・明王・天部等を表す一文字の「種子」236字について、歴史や特徴、書き方などの解説を加えた字典。書写の心構えや基本筆法も紹介。



超越と実存 南直哉著 新潮社 1800円
「諸行無常」と説いたブッダの教えは日本へと伝わる過程でどう変遷したのか。恐山菩提寺院代を務める曹洞宗住職が超越と実存の関係から考察する。



しあわせの宗教学 櫻井義秀編 法藏館 2500円
幸福度と宗教はどのような相関関係にあるのか。お寺と地域の子供の成長、過疎地の神社を中心とした地域おこし、傾聴ボランティア活動など現場調査から、幸せの問題に迫った研究論考集。



自然の神と環境民俗学 鳥越皓之著 岩田書院 2200円
自然に神仏を見る日本の自然との付き合い方、格闘の仕方を研究する環境民俗学の視点から日本人の心性が浮き彫りにされる。「信仰が花見見物をうながす」「神の土地と学問の実践」他。



畜生・餓鬼・地獄の中世仏教史 生駒哲郎著 吉川弘文館 1700円
犯した罪で堕ちる地獄が変わり、課される責め苦も違う。八大地獄と各十六の小地獄を記した『正法念処経』の世界を解説。「子どもの躾と地獄」など。



地獄の経典 山本健治著 サンガ 1800円
八大地獄に付随する十六の小地獄の関係を描き、とりわけ地獄・餓鬼・畜生の世界を詳説していることで名高い『正法念処経』の世界が紹介される。



ことばのお守り 天野こうゆう著 高野山出版社 1200円
メディア出演など幅広く活動する岡山の高野山本山布教師の住職が、ネット法話やラジオ番組、各地の法話会など様々な媒体を通じて伝えた法話集。



こころころころ 横田南嶺著 青幻舎 1000円
副題は「はがきで送る禅のこころ」。臨済宗円覚寺派管長のはがき伝道が一冊にまとめられた。「今日好風」「一輪の花から学ぶ」など76通を収める。



ブータンの瘋狂聖 ゲンデュン・リンチェン編 岩波書店 720円
型破りな方法で庶民に仏教の真理を伝え歩いたブータンの遊行僧、ドゥクパ・クンレー(1455~1529)の逸話集。今枝由郎訳。文庫判。



日本の七宗と総本山・大本山 青春出版社 1210円
日本の七宗(天台宗、真言宗、浄土宗、浄土真宗、曹洞宗、臨済宗、日蓮宗)と名だたる総本山・大本山の歴史と宗旨を解説。永田美穂監修。新書判。



水子供養 商品としての儀式 H・ハーデカー著 明石書店 4000円
なぜ水子供養は一時期、メディアにも注目されたのか。供養の商品化と、その背景にあるセクシュアリティと宗教観を米国の宗教学者が考察している。



仏教語源散策 中村元編著 KADOKAWA 920円
上品・下品、卍、卒都婆などの仏教語から我慢、人間、出世などの身近な日常語まで語源から仏教的世界観を浮き上がらせる名著が文庫判として復刊。



ジャイナ教とは何か 上田真啓著 風響社 700円
「菜食・托鉢・断食の生命観」が副題。仏教、ヒンドゥー教と並ぶインドの伝統的宗教であるジャイナ教の教義、歴史、出家と在家、生命観を紹介する。



葬送の仕事師たち 井上理津子著 新潮社 550円
お寺が日々かかわる葬祭現場は今どうなっているか。葬儀社、湯灌師、納棺師、復元師、エンバーマー、火葬場職員など葬送の仕事師の実態ルポ。文庫判。





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