[『月刊住職』 2019年5月号より転載]

密教美術形成史の研究 安元剛著 起心書房 12000円
ガンダーラ仏で知られる北西インドは東西文明の十字路となり、その仏教美術は中国やチベットに影響を及ぼした。同時代のローマ彫刻との比較など世界史的視野から密教美術誕生に迫る。



蔵俊撰『仏性論文集』の研究 楠淳證他編 法藏館 15000円
平安末期の唯識学匠・菩提院蔵俊は学名高く、多くの法相宗学匠を育てた。唯識と日本中世宗教思想史の専門家が蔵俊『仏性論文集』全編に翻刻・訓読・註記と解説を付して、全貌を論じる。



現代語訳 理趣経 正木晃著 KADOKAWA 880円
空海以来、真言宗寺院で毎朝毎夕に読誦されるようになった『理趣経』。難解とされてきた原文を分かりやすく現代語訳化し、その教えの真髄を最新の研究をふまえて伝えたもの。文庫判。



古代の祭祀と年中行事 岡田荘司編 吉川弘文館 3800円
新嘗祭、大嘗祭、修正月など古来、国家鎮護・安泰のために天皇や寺社によって行われてきた法会60件を厳選し、最新研究に基づきその儀礼について解説する。図版や年表・索引も付す。



女講中の民俗誌 戸邉優美著 岩田書院 7400円
副題は「牡鹿半島における女性同士のつながり」。婚姻など人生の節目や宗教儀礼と集落のつながりである講はどのようにかかわりながら機能していたのか。若手民俗学者による研究論考。



南無阿弥陀仏と南無妙法蓮華経 平岡聡著 新潮社 740円
階層問わず受容された念仏と唱題は、日本仏教を大きく変えた。京都文教大学学長が犬猿の仲とされた法然と日蓮の思想を比較し真髄に迫る。新書判。



『教行信証』入門 阿満利麿著 筑摩書房 2200円
なぜただ念仏なのか、他力なのか。親鸞が先師の著述をふまえて、自らの思想を明らかにした『顕浄土真実教行証文類』を分かりやすく解説する。



師・安田理深論 本多弘之著 大法輪閣 2000円
曽我量深と共に「興法学園」を設立、晩年は私塾「相応学舎」を開き、唯識の講義などを行い多くの若者を教導した真宗大谷派僧侶、安田理深。その弟子である著者が師の思想と生涯を語る。



中村久子女史と歎異抄 鍋島直樹著 方丈堂出版 1800円
三歳の時に病で両手両足を失い、見世物小屋で芸人として生きる苦難の半生を送りながらも「『無手無足』は仏より賜った身体」と障害者支援に人生を尽くした中村久子の仏教観を紹介する。



みんなを幸せにする話し方 露の団姫著 興山舎 1700円
副題は「露の団姫の仏っちゃけお笑い問答」。本誌別冊に好評連載中の〈露の団姫のお笑い仏教寄席〉が単行本になりました。人気落語家で僧侶ならではの、とっておきの三十五話はおすすめです。



生きる力になる禅語 横田南嶺・阿純章著 致知出版社 1500円
禅語の持つ力とは何か。鎌倉の臨済宗円覚寺派管長と、東京の天台宗円融寺住職が読み解く。「煩悩の中に悟りがある」「生きるも死ぬも精一杯」他。



幽霊の歴史文化学 小山聡子他編 思文閣出版 2500円
文学から芸能まで幽霊を様々に表象してきた日本人。歴史学、文学、美術史学、宗教学など多方面の研究から日本人が幽霊に求めたものを探り出す。



挽歌と反語 富山英俊著 せりか書房 3500円
法華経に傾倒したことでも知られる文学者・宮澤賢治の『春と修羅』の最高峰の挽歌群「青森挽歌」全編を分析し、作品に与えた仏教思想を展望する。



心を救うことはできるのか 石川勇一著 サンガ 1800円
副題は「心理学・スピリチュアリティ・原始仏教からの探求」。原始仏教に基づく独自の修行・研究・臨床実践を行う心理学者が苦の解決方法を探る。



山口晃 親鸞全挿画集 山口晃著 青幻舎 5500円
五木寛之の『親鸞』の新聞連載に人気日本画家が挑んだ書き下ろし挿画1052点を、絵解きコメント付きで収載。作品制作の過程が明らかにされる。



仏像の光と闇 宮澤やすみ著 水王舎 1500円
末法思想が広まり、混沌とした社会において生み出された仏像は実は「呪いの装置」でもあったのか。神仏研究家を名乗る著者による新たな仏像批評。



判例にみる宗教法人の法律問題 本間久雄著 第一法規出版 4300円
本誌〈法律相談〉の回答者が憲法、墓埋法、民事法、宗教法人法等の関連法を切り口に宗教法人にかかわる法律問題や紛争解決の指針となる判例解説。





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