[『月刊住職』 2019年8月号より転載]

近世の女性と仏教 菅原征子著 吉川弘文館 10000円
男女差別が明確にあった近世社会において女性たちは仏教といかにかかわったか。過去帳、授戒会、仏道修行の実態から、女性開基のお寺や白隠門下の女性禅者など多彩な問題に論究する。



近世仏教の教説と教化 芹口真結子著 法藏館 3500円
江戸時代に学寮が設立され、僧侶の教化や書物が社会に広がる一方で、教学論争も巻き起こり、西本願寺のように幕府の介入を招く事態も生じる。教化を通じた民衆意識や社会構造を考察。



仏教彫像の制作と受容 奥健夫著 中央公論美術出版 18000円
和様と鎌倉彫刻の成立という様式の転換期にあたる奈良時代末期から鎌倉時代前期を主として、仏像がどのようなものとして造られ、社会に存在してきたかを文化庁文化財調査官が論じる。



道元の思想と書 岩井孝樹著 大法輪閣 3300円
道元の真筆か、弟子の代筆か。論争生じる道元の書を美術史家が筆跡鑑定から事実を明らかにする。「禅林墨跡と道元の書」「道元と本覚思想」他。



法話の心得 佐野俊也著 心力舎 900円
法話は何を説き示すか、どう学べばよいか、いかにして生み出すか。曹洞宗特派布教師として長きにわたり研鑽し、後進の指導にもあたってきた僧侶が現代人に届く法話の実践法を指南。



ブッダが教える愉快な生き方 藤田一照著 NHK出版 670円
著者はスターバックスやフェイスブックなど米国の大手企業に坐禅指導を行ってきた曹洞宗僧侶。ただ坐る、受け入れるなどブッダと禅の教えを説く。「煩悩に気づける人」「禅の発見」他。



一日一戒 良寛さん 枡野俊明著 自由国民社 1200円
「清々しい人になる90の教え」が副題。自分の話をし過ぎない、相手の話を遮らないなど、会話の際に自戒を込めるポイントを曹洞宗住職が伝授する。



茶席の禅語 講座 石田哲彌著 考古堂書店 2000円
副題の「数学・物理・生物・歴史から禅語の醍醐味を味わう」のとおり、理系の曹洞宗僧侶が、多角的な視点から茶席における禅語の妙味を説く。



心の窓 街角の掲示板 那須信孝著 方丈堂出版 1200円
京都の浄土真宗本願寺派一行寺住職が、約半世紀にわたって伝道掲示板に掲げた伝道句六百余のうち約150首を精選し、言葉に込めた思いを綴る。



日本の旅人 日蓮 紀野一義著 淡交社 2000円
40歳での伊豆流罪、50歳の佐渡流罪など度重なる弾圧を受け、61歳で遷化した日蓮の生涯を旅と捉え、その軌跡を仏教学者が追体験した評伝。



〈生ける屍〉の表象文化史 伊藤慎吾・中村正明著 青土社 2400円
死者が骸骨となって墓場で酒宴を開く情景、死後に鬼となって祟りを起こすという伝承など日本における死霊の描かれ方を通史として捉え、日本人の死生観について浮き彫りにする論考。



アンドロイド観音が般若心経を語りはじめた かもがわ出版 1000円
今年の春、京都の臨済宗建仁寺派高台寺に登場し耳目を集めたアンドロインド観音。その法話の内容をマンガで解説。監修・高台寺、絵・結城わらゑ。



大黒天信仰と俗信 笹間良彦著 雄山閣 2000円
インドの暗黒・戦闘の神マハーカーラが日本ではなぜ大黒天として施福の神となったのか。大黒天の姿は何を表現しているか。その信仰の諸相を解く。



金剛の塔 木下昌輝著 徳間書店 1700円
世界最古の会社と言われる宮大工集団「金剛組」の技術とは何か。現代の高層建築にも生きる五重塔の心柱構造が生まれた歴史と継承を描く時代小説。



佐々井秀嶺、インドに笑う 白石あづさ著 文藝春秋 1750円
副題は「世界が驚くニッポンのお坊さん」。インドで仏教再興と不可触民の地位向上に励み、一億五千万人を率いる破天荒な僧侶への五年間密着ルポ。



天空の聖域ラルンガル 川田進著 集広舎 2200円
1980年、東チベットの標高4000mの谷間に開かれ、一万人以上の学僧と僧坊群を擁する一大宗教都市になったラルンガルの道のりと現況のルポ。



マインドフルネスを極める 貝谷久宣他編 サンガ 2500円
米国発の瞑想法、マインドフルネスの効用について禅僧や心理学者も交えて活発な討論が交わされた心療内科クリニック開催のワークショップの記録。



西洋人の「無神論」 日本人の「無宗教」 Discover21 1200円
一神教世界で無神論者が増えているというが、日本人の無宗教論者とどう違うか。無神論者の実態と共に比較。「無神論のロジック」他。中村圭志著。





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