[『月刊住職』 2019年11月号より転載]

院政期天台教学の研究 松本知己著 法藏館 9000円
平安時代から鎌倉時代初期に活躍した比叡山延暦寺の僧侶、宝地房証真の教説を日本天台教学史上の結節点と捉え、法華教学における思想史的意義を解明。「宗性が学んだ天台教学」他。



『法華経』のはなし 渡邊寶陽著 佼成出版社 1600円
副題は「久遠の思想と菩薩への道」。立正大学元学長が、諸経の王と呼ばれる『法華経』の教えを日本文化とのかかわりを交えながら易しく解き明かす。



時宗年表 髙野修・長澤昌幸編 平凡社 4600円
中世時代、一遍によって開創された浄土教一門の時宗。多くの民衆を惹きつけた教団の姿が、最新の研究と史料整理をもとに年表としてまとめられた。



一遍上人と熊野本宮 桐村英一郎著 はる書房 1500円
念仏札を配り歩いていた一遍が、熊野権現の神勅で立教改宗に至ったという熊野成道。三重県立熊野古道センター理事が伝説の逸話の根源を探る。



菩薩 由来と信仰の歴史 速水侑著 講談社 920円
一切衆生を救おうとする菩薩は、大乗仏教の発展、ヒンドゥー教の影響もあり様々な姿として顕されるようになる。各尊の成り立ちと役割を図版と共に解説。拝観の手引き付き。文庫判。



他人の言葉に傷つくあなたは幸運な人 井川裕覚著 双葉社 1300円
マウンティングをされたり、ハラスメントにあった時、仏教ではどう応じるのか。人間関係由来の具体的な40の苦しみに、グリーフケアに携わる奈良の高野山真言宗僧侶が答える法話集。



お寺の掲示板 江田智昭著 新潮社 1000円
印象深い門前の伝道掲示板をネット上に投稿してもらう仏教伝道協会主催の「輝け! お寺の掲示板大賞2018」。39の掲示句を写真と共に紹介。



じごく ごくらく こころノート 風濤社 1500円
境内に地獄堂やほとけのくにを作った大阪・平野の高野山真言宗全興寺が企画監修した、子供向けに地獄極楽の教えを説く絵本。くら田たまえ作。



人生を楽しく過ごしなさい 酒井雄哉著 誠文堂新光社 1300円
千日回峰行を二度満行した天台宗大阿闍梨は死をどう捉えていたか。最期の様子、語られた言葉などを七回忌にあわせて刊行。「再発、退院延期」他。



地域とともに未来をひらく お寺という場のつくりかた 松本紹圭・遠藤卓也著 学芸出版社 2000円
今、求められるお寺とは先祖教と仏道の双方の入り口となる「場」を作ることだと著者は言う。カフェから子育て支援までユニークな寺院活動を紹介。「ひきこもりのためのお寺カフェ」他。



過疎地神社の研究 冬月律著 北海道大学出版会 7500円
お寺の檀家と神社の氏子を兼ねている地域は多いが、いま過疎地の神社はどうなっているか。日本一過疎の割合が高い高知県の神社を調査し、地域コミュニティと宗教意識の変化を探る。



空蓮房 仏教と写真 谷口昌良・畠山直哉著 赤々舎 2500円
空蓮房は東京・蔵前の浄土宗長應院に設置された瞑想空間。同房で行われた写真展を住職と写真家が振り返り、その表現を仏教的視点から問い直す。



伝説の葉上大阿闍梨 横山照泰編著 善本社 1300円
ブッダガヤ日本寺初代竺主、世界連邦日本宗教委員会の結成者、さらに比叡山で世界宗教サミットを実現させた天台宗僧侶・葉上照澄師の足跡の紹介。



ビハーラと妙好人 ビハーラ医療団編 自照社出版 1800円
ビハーラの思想は妙好人の宗教世界とどうかかわるか。仏教者と医師の八人による講義録。「妙好人才市の生涯と世界観」「信心と一人称の死」など。



人生を百倍楽しく生きる 生き方が、仏教 安達瑞光著 風詠社 1500円
二十年にわたり悩み相談を受けてきた京都の曹洞宗神応寺住職が、禅の十六戒を日常の心得に、八大人覚を人生の道標に生きてほしいと説く法話集。



日本の民俗信仰を知るための30章 八木透著 淡交社 1800円
めぐり巡礼、道祖神、師走の仏名会など四季折々に行われる日本各地の年中行事を民俗信仰の表象と捉え、庶民の生活と祈りの姿を民俗学から捉える。



ジャータカものがたり はじめてのともだち 小学館 1400円
王様のペットとして何不自由ない暮らしだが孤独な象と、自由な野良犬が友情を育む物語の絵本。中川素子・再話、バーサンスレン・ボロルマー絵。



立て直す力 上田紀行著 中央公論新社 820円
先行き不安な世界情勢を生き抜く思想とは何か。スリランカの悪魔祓いの調査や日本仏教にかかわってきた研究者が、生きる哲学としての思想を綴る。





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