[『月刊住職』 2020年11月号より転載]

般若心経の神髄 小峰彌彦著 里文出版 2300円
写経でも親しまれる『般若心経』だが、意外に不明点も多いという。大正大学元学長が、空海の密教的解釈を手がかりにその問題点、全体像、さらに成立や受容過程を通じ真の解釈に迫る。



タイ仏教教団 タンマユット派の研究 山田均著 五曜書房 10000円
仏教の信仰篤いタイ。タイ上座部仏教教団の一つ、タンマユット派は前近代の同国において発生した。1828年から1868年に至るタイ上座部仏教教団の歴史研究。「国法と僧」など。



仏都鎌倉の150年 今井雅晴著 吉川弘文館 1700円
武士による初の統治だった鎌倉幕府。その精神的支柱に求められたのは平安以来の仏教とは異なる宗派だった。幕府の指導者が政治的課題にいかに取り組んだか、仏教とのかかわりから描く。



天才 富永仲基 独創の町人学者 釈徹宗著 新潮社 800円
主著『出定後語』で知られる富永仲基は江戸時代の思想家。仏典研究に力を注ぎ世界で初めて仏典を実証的に解読し「大乗非仏説論」を導いた。宗教学者の住職がその思想に迫る。新書判。



平和と平等の浄土論 菱木政晴著 白澤社 2400円
非戦を唱え、大逆事件で幸徳秋水らとともに死刑判決を受けた真宗大谷派僧侶の高木顕明。当時、教団とも異なったその思想を、江戸時代の伝統教学の講義録『註論講苑』に沿って考察。



老いて、自由になる。 平井正修著 幻冬舎 1300円
高齢社会の日本で「老い」を楽しみながら生きるコツはあるか。東京の臨済宗国泰寺派全生庵住職がお釈迦様の最期の教え「遺教経」を通じて指南。



人生は凸凹だからおもしろい 枡野俊明著 光文社 900円
「逆境を乗り越えるための『禅』の作法」が副題。コロナ禍で思いもよらぬ事態に直面した人も多い時代、人生を生きる心得を禅思想に学ぶ。新書判。



鎌倉 花和尚独語 大下一真著 冬花社 1700円
著者は歌人でもある鎌倉の臨済宗円覚寺派瑞泉寺住職。無窓国師作の名庭など四季折々の自然に囲まれて生きる禅僧の法話集。「花より梅干し」他。



心に響くことば 福間義朝著 本願寺出版社 120円
「老いが、病が、死が私の生を問いかけている」など先達の仏教者の言葉を、浄土真宗本願寺派布教使でもある住職が味わいながら読み解く法話冊子。



世界で一番美しいマンダラ図鑑 正木晃著 エクスナレッジ 1800円
密教が、世界の構造や心の構造を伝えるために幾何学的な構成で表したマンダラ図。宗教学者が日本やチベット、ブータンなどのマンダラ(平面・立体・都市等)約80種を写真と共に解説。



源氏物語と遁世思想 笹川博司著 風間書房 2300円
十世紀後半、天台浄土教の広がりに若者の出家が相次いだ。藤原高光の出家から『源氏物語』まで、比叡山「横川」をめぐる遁世思想と文学を考察。



日本の仏教と十三宗派 釈徹宗・村越英裕他監修 宝島社 1000円
 仏教とは何か、宗派で何が違うのか、お葬式の意味とは等、仏教の教えと習俗にかかわる基礎知識を豊富なイラストと写真入りで平易に説いたムック本。



キャラ絵で学ぶ! 地獄図鑑 山折哲雄監修 すばる舎 1600円
世界宗教には「地獄」の観念があるが、日本の地獄観は『往生要集』がベースになっている。イラストと共に、地獄について学ぶ子ども向けの図鑑。



日本幽霊画紀行 堤邦彦著 三弥井書店 2800円
この世に思いを残して死んでいった亡き人を「幽霊」として絵や物語にしてきた日本人。お寺が所蔵する幽霊画150点を仏教民俗と共に解説する。



なぞれば心ほぐれる 開運写仏 田中ひろみ著 毎日新聞出版 1000円
コロナ流行後、自宅での写仏が心の平穏につながったという声をけっこう聞く。毎日新聞購読者向け情報誌に連載された「なぞるだけ写仏」の書籍化。



京都異界に秘められた古社寺の謎 新谷尚紀編 ウエッジ 1300円
千二百年の歴史を有する古都には、現世と異界の境界と見立てられた場所が数多く残る。ゆかりの古社寺を辿り日本人の宗教観が浮き彫りにされる。



紅蓮浄土 石山合戦記 天野純希著 KADOKAWA 1800円
16歳になる孤児の千世は、本願寺の間諜組織「護法衆」の一員として育てられ、篤い信仰心と秀でた戦闘力を身に着ける。石山合戦舞台の歴史小説。



西田哲学とその彼岸 重久俊夫著 晃洋書房 3300円
副題は「時間論の二つの可能性」。時間は本当に流れているのか。「永遠の今の自己限定」に帰着する西田哲学の思想に迫る。「西田哲学は汎神論か」他。





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