[『月刊住職』 2021年6月号より転載]
凝然教学の形成と展開 一般財団法人律宗戒学院編 法藏館 11000円
『八宗綱要』の著者として知られる鎌倉時代後期の東大寺僧侶凝然に関する論文集。仏教学や歴史学などの研究者15人が論じる多彩な切り口から、学僧としての幅広い活躍がしのばれる。
構築された仏教思想 ツォンカパ 松本峰哲著 佼成出版社 1870円
14~15世紀にチベット仏教の基礎を作ったツォンカパの生涯と思想を研究者で真言宗御室派副住職が解説。副題「悟りへの道 ― 三乗から真の一乗へ」のとおり修行の道程を説き明かす。
暮らしのなかの〈いのち〉論 田代俊孝著 方丈堂出版 990円
ビハーラ活動の先駆者である真宗大谷派住職が生命倫理をテーマに綴る。仏教の救いとは死にゆく身のまま「これでよし」と助かっていくことと説く。
法華経へのいざない 北川前肇著 大法輪閣 2420円
法華経の主要な経文を現代語訳しながら章ごとにやさしく解説。研究者で日蓮宗住職でもある著者がインド仏教から日蓮教学までを総動員して久遠の釈尊による救いの要諦を明らかにする。
「自分が好きな子」になる子育て 宮本覚道著 現代書林 1485円
曹洞宗住職で幼稚園園長による教育エッセイ。園児に「夢はかなう」と分かってもらうため自らパワーリフティングで優勝して示した。自己肯定感を持たせる方法を説得力ある実践で語る。
しあわせを呼ぶ108の智恵 川村妙慶著 海竜社 1540円
真宗大谷派の尼僧が人づきあいや生活の不安などのお悩みに仏教の智慧で答える。「悩むことが悪いと思うから悩みが深くなるんです。悩み方を変えれば良い」。明快な導きが心強く響く。
山寺立石寺 山口博之著 吉川弘文館 1980円
山形県の天台宗立石寺の歴史を石造物などでたどり、納骨霊場としての信仰を描き出す。焼き討ちに遭った比叡山への不滅の法灯の返還がハイライト。
禅の四季彩 恵林寺著 工藤憲二撮影 世界文化社 13200円
武田信玄の菩提寺で知られる甲州市の臨済宗妙心寺派恵林寺の写真集。庭園や仏像のカラー画像を桜色・萌黄色・橙色と色別に並べた構成が美しい。
血の日本思想史 西田知己著 筑摩書房 1012円
日本人が血に抱くイメージの変遷を宗教や文学に探る。穢れを象徴した血が、血縁など肯定的に使われるのは近世以降。仏教でも血脈が世襲によって血筋の意味に解釈されてゆく。新書判。
古典彫刻技法大全 籔内佐斗司監修 求龍堂 3850円
東京藝術大学文化財保存学研究室が行ってきた仏像修復の技術を解説する。伝統技法から3Dデータを利用した復元までを網羅。カラー図版多数掲載。
「敦煌」と日本人 榎本泰子著 中央公論新社 2090円
昭和の日本人にとって憧れだった中国のイメージは天安門事件を機に一変した。消えたシルクロードブームを今後の日中関係を考えるために振り返る。
となりの一休さん 伊野孝行著 春陽堂書店 2200円
NHK放送アニメ「オトナの一休さん」を描いたイラストレーターによる漫画とエッセイ。研究者との対談や漢詩の解説などで一休宗純の実像に迫る。
なぜ僕は瞑想するのか 想田和弘著 集英社 1870円
日本ヴィパッサナー協会の十日間の瞑想修行に参加した映像作家の体験ルポ。不快感に対し嫌悪で反応しなければよいという気づきをクールに語る。
新宗教の現在地 いのうえせつこ著 花伝社 1650円
旧統一教会やオウム真理教、幸福の科学といった新宗教の勧誘の手口や政治権力との関係を述べ、活動の現状をレポートする。弁護士の山口広が監修。
宗教の経済学 ロバート・J・バローほか著 慶應義塾大学出版会 2970円
「信仰は経済を発展させるのか」を副題とする宗教経済学入門。宗教が経済と社会に与える効果を米国のマクロ経済学者2人が分析する。田中健彦訳。
現代家族のリアル 中込睦子ほか編著 ミネルヴァ書房 3300円
家族と暮らしのここ数十年の変化を各分野の研究者が論じる。結婚、家事、自治会活動などに続いて葬送に2章分を当てる。執筆は蒲池勢至と森謙二。
語り芸パースペクティブ 玉川奈々福編 晶文社 2970円
浪曲師の編著者が伝統芸能の第一人者と対談した講演録全11章。能・落語などにまじって浄土真宗の節談説教(講師は廣陵兼純と釈徹宗)を収録。
オンラインでもアイスブレイク! 青木将幸著 ほんの森出版 1760円
画面上での会議や研修で緊張した雰囲気をほぐす50通りのアイデアを紹介。体を動かしたり質問に答えてもらったりと、法話で使えそうな技も満載。
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