[『月刊住職』 2021年10月号より転載]

中世禅の知 末木文美士監修 臨川書店 3190円
真言宗智山派真福寺に所蔵されている聖教の調査研究で明らかになった鎌倉時代前後の禅に関する新知見を21人の研究者が論じる。テーマは禅と密教の関係から喫茶文化まで幅広い。



元三・慈恵大師良源の歴史文化史料 川勝賢亮著 岩田書院 7040円
比叡山延暦寺中興の祖である良源の生涯と没後の元三大師としての信仰に関する論文。著者は良源ゆかりの天台宗拝島大師本覚院山主で東洋史学者。



日本古代の環境への心性史 三宅和朗著 吉川弘文館 7480円
古代人は自然環境や災害をどのように受けとめていたのか。近代の科学的観測ではなく、五感で捉えた表現を説話や絵巻から読み解くと、仏像の霊験譚も決して絵空事ではないと分かる。



伝教大師 最澄 大久保良峻著 法藏館 2750円
日本天台宗宗祖最澄の伝記。比叡山入山から入唐、空海や徳一との関係、大乗戒独立など生涯の要点を重要文献の原典を引きながら解説。日本文化の礎につながる功績を余さず紹介する。



語られ続ける一休像 飯島孝良著 ぺりかん社 6380円
一休宗純は自ら風狂と名乗ったりとんち坊主に仕立てられたりして実像が見えにくく、禅者や研究者は自分なりの解釈を語ってきた。近現代の一休像を整理してその変遷を提示する論考。



ダンマパダ ブッダ「真理の言葉」講義 釈徹宗著 KADOKAWA 1100円
初期仏典のエッセンスを一般聴衆に講義した筆録。仏教を現代に生かすヒントを、ユーモアを交えて紹介。終章では真宗僧侶の著者が原始仏教と日本浄土仏教との接続を試みる。文庫判。



幸せになる坐禅 藤井隆英著 海竜社 1540円
「誰でも5分でできる脱ストレス禅セラピー」と題し、坐禅を忙しい現代会人向けに身体と心の健康法としてアレンジ。著者は曹洞宗僧侶で整体師。



世界でいちばん素敵なお寺の教室 松島龍戒監修 三才ブックス 1760円
「お寺でお賽銭をあげる理由は何?」「実は、修行のひとつです」などお寺に関する素朴なQ&A約200問に美しいカラー写真を添えた仏教入門書。各宗派や有名寺院などのデータも掲載。



歴史のなかの音 笹本正治著 三弥井書店 2970円
梵鐘をはじめとする寺社の鳴り物の変遷を紹介。中世と近世で音を出す意味や目的がどう変わったか、文献をひもとき今や聞けない音色に耳をすます。



死者と霊性 近代を問い直す 末木文美士編 岩波書店 946円
中島隆博・若松英輔・安藤礼二・中島岳志と編者の論客5人が座談会形式で近代の潮流を総括する。宗教や文学から政治まで縦横無尽に討議。新書判。



願いが叶う! 写経 大角修監修 朝日新聞出版 1210円
書き込み式の般若心経練習帳。一字ずつ書き始めて全文へ。手本は神護寺谷内弘照貫主の筆、QRコードから即成院平野雅章住職の読経動画が聴ける。



新聞記者が見た古代日本 関口和哉著 雄山閣 2640円
読売新聞文化財記者が奈良や大阪の発掘現場を取材して得た知見を披露。歴史を揺るがす新発見から文化財保護のあり方まで報道の裏話を交えて綴る。



禅と浪漫の哲学者・前田利鎌 安住恭子著 白水社 3080円
大正時代の知られざる思想家の評伝。坐禅に打ち込みつつ西洋哲学を研究し32歳で死去。本書ではとくに平塚らいてうの姉との恋愛に焦点を当てる。



津軽のイタコ 笹森建英著 錦正社 3080円
恐山の霊能者として知られるイタコを長年の調査に基づき学術的に解説。憑依についても客観的に触れ、依頼者がイタコに何を求めているかに迫る。



これだけは見ておきたい 世界のお墓 199選 国書刊行会 7480円
造形の美しさや被葬者が有名などの基準で選んだ墓地カラー図鑑。欧米が中心だが日本は高野山奥の院、泉岳寺、雑司ヶ谷ほか。ローレン・ローズ著。



アロハの島で寺めぐり 小川はつこ・隆平著 東銀座出版社 2300円
明治の移民政策でハワイ島に開創された仏教寺院を廃寺含む36カ寺の紹介。日本在住の夫婦が現地取材した観光ガイドにとどまらない貴重な記録。



雅楽のひみつ 日本雅樂會監修 メイツ出版 2530円
宮中や寺社の儀式で奏でられる伝統音楽の入門書。楽器や編成、装束等をやさしく解説。平等院雲中供養菩薩の造形など仏教と雅楽の接点も興味深い。



蓮 マンダラ 小椋力著 日本写真企画 3300円
蓮の花や実の表情を鮮やかに切り取った写真集。仏教や共生をテーマに蓮のごとく清らかな人生に思いを馳せる。作者は医師で著書に『写真健康論』。





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