[『月刊住職』 2022年7月号より転載]

仏教の正統と異端 パーリ・コスモポリスの成立 馬場紀寿著 東京大学出版会 3960円
上座部仏教と大乗仏教が対立する図式はパーリ語とサンスクリット語の2言語の区分に由来する誤った認識として、近代仏教学の軌道修正を促す論考。



古典インドの議論学 須藤龍真著 九州大学出版会 6930円
副題は「ニヤーヤ学派と仏教徒との論争」。同派の文献『ニヤーヤマンジャリー』を概説しこれを仏教などのインド哲学諸派の見解と比較し分析する。



ブッダ臨終の説法完訳大般涅槃経1 田上太秀著 大法輪閣 2640円
釈尊入滅前の最後の説法といわれる曇無讖訳『大般涅槃経』全文の現代語訳全4冊の第1巻。年内に全巻が発行予定。1996年の刊行書の新装版。



空海『三教指帰』桓武天皇への必死の諫言 藤井淳著 慶應義塾大学出版会 2640円
若き空海の出家宣言とされる『三教指帰』を丹念に読み解き、自身のルーツ佐伯氏を退ける桓武天皇に対する戒めという隠された意図を明らかにする。著者は駒澤大学教授で浄土真宗僧侶。



空海の究極へ『秘密曼荼羅十住心論』を読む 竹村牧男著 青土社 3960円
空海の主著『十住心論』の全体を一覧した上で、核心部分である第十「秘密荘厳住心」を通読する。一般読者向けに原文を短く切りながら平易に解説。



親鸞左訓・字訓・語訓辞典 田代俊孝編 法藏館 3300円
親鸞が著作の中で自ら記したとされる注釈を抜き出し五十音順に整理。浄土真宗特有の用語の理解に便利な辞書。編者は仏教学者で真宗大谷派住職。



仏教のミカタ 仏教から現代を考える31のテーマ 井上尚実ほか著 東本願寺出版 935円
「老い」「AI」「命の選別」「絆」といった今日的課題を大谷派僧侶31人が仏教に照らして語る。コロナの時代を生きる知恵を共にまなぶ法話集。



朝をひらく 永田円了著 文藝春秋 1500円
曹洞宗住職の新聞連載エッセイ73編を収録。子育てで実践した原則やイライラ解消法など、お寺暮らしの日常から生じた体験や思索を軽妙に綴る。



女人禁制 鈴木正崇著 講談社 1012円
大峯山など女性が立ち入れない聖地の歴史と現状を示し、仏教における男女の不均衡や穢れの問題を考える。伝統か差別かの二分法を乗り越えるべく20年ほど前に刊行された本の文庫化。



宗教と精神医学のあいだ 大宮司信著 日本評論社 3740円
精神病理学者による宗教と精神医学との関連を考察する論文集。テーマはオウム真理教事件、癒しと救い、阿闍世コンプレックス、ロボトミーなど。



「死」と向き合うためのマインドフルネス実践 大田健次郎著 佼成出版社 1980円
仏教に由来する心の観察を流行のストレス低減ではなく心理療法として紹介する。理論の説明と12のレッスン。



日本美術の核心 矢島新著 筑摩書房 1067円
完成度の高さよりも遊び心と素朴な表現こそが日本美術の独創性だと美術史学者が看破。円空仏や仙厓の禅画などに注目し豊富な図版で分析。新書判。



画聖雪舟の素顔 島尾新著 朝日新聞出版 935円
臨済宗の画僧雪舟が描いた「天橋立図」は他の作品より情報量が異常に多い。雪舟の生涯をたどり、この絵の政治的・軍事的意図を読み解く。新書判。



地域歴史文化継承ガイドブック付・全国資料ネット総覧 天野真志編 文学通信 1760円
古文書や民具、仏像などの保存方法を解説。後半は各地域で保存活動をする「資料ネット」26団体を紹介する。



日本の暮らしと信仰365日 渋谷申博著 ジー・ビー 2838円
一月一日の若水から大晦日の除夜の鐘まで、一年の宗教的行事を一日一項目ずつ選んで解説。今に続く習わしから季節ごとの知恵や祈りが見えてくる。



御朱印でめぐる全国のお寺 地球の歩き方 1540円
老舗旅行ガイドが御朱印に特化し編集した寺院巡り案内。モデルプランや御利益別紹介、独創性やレア度で注目の寺院など御朱印の最新事情が分かる。



新版写真・図解 日本の仏像 薬師寺君子著 西東社 1650円
国宝・重文を中心に280の仏像をカラー写真で紹介する。制作年代、寸法、所蔵寺院を記し特徴を解説。2015年刊行書を最新データで再発売。



死にゆく者の祈り 中山七里著 新潮社 781円
死刑をめぐるサスペンス小説。主人公である教誨師の浄土真宗僧侶にとって死刑囚は知人だった。拘置所内のリアルな描写が物語を牽引する。文庫判。





Copyright (C) 2006-2022 kohzansha. All Rights Reserved.