[『月刊住職』 2023年8月号より転載]

古代インド論理学の研究 石飛道子著 起心書房 10560円
インド哲学のニヤーヤ学派による実在論的立場に対し「空の論理」で論争を繰り広げた龍樹の思想を探求する。 著者は仏教の論理学が専門の研究者。



インドの唯名論・実在論哲学 宮元啓一著 花伝社 2200円
インド哲学研究者が対話形式で授業するシリーズの第2巻。ことばと対象が別物とする実在論と、同じと考える唯名論を解説し、ギリシャ哲学やヴェーダ聖典を経て大乗仏教の起源に迫る。



梵網経の教え 船山徹著 臨川書店 1980円
大乗仏教徒の生活規則を説く『梵網経』の特徴を解説し、十重四十八軽戒を教える同経下巻を現代語訳で紹介。とくに食生活で酒・肉・五辛を避ける理由について経文を正確に読み解く。



唯識 これだけは知りたい 加藤朝胤監修、船山徹・石垣明貴杞執筆 法藏館 1650円
唯識の歴史をインド・中国・日本とたどった上で、基本思想を明快に解説。挿画として現代美術工芸家20人の作品をカラー掲載。薬師寺管主の監修。



日本人無宗教説 藤原聖子編著 筑摩書房 1870円
「日本人は無宗教だ」と語る一節を明治以降の新聞記事から拾い出して、それが何を伝えようとしているのかを分析。無宗教を欠落と捉えるか、充足とするか、時代ごとの意識の変遷を追う。



絶望でなく希望を 末木文美士著 ぷねうま舎 2530円
コロナ後を生きる思想を仏教学者が模索。西洋近代哲学の崩壊後の可能性として、中世以来の伝統仏教に基づく「菩薩の倫理学」の構想に希望を見る。



聖徳太子と法隆寺 1400年の祈り 児島建次郎著 柳原出版 5170円
聖徳太子をはじめとする古代仏教の歴史と文化をシルクロードとの関連を軸に考察。著者は仏教遺跡を取材してきた元NHKアナウンサー。法隆寺歴代住職や文化人らの文章も引用する。



空海論/仏教論 清水高志著 以文社 2860円
哲学研究者が「二辺を離れる」と題して仏教学者の師茂樹と亀山隆彦を聞き手に仏教から現代思想まで語るのが前半。後半は空海『吽字義』を論じる。



生きものたちと仏教のはなし 華園真慶著 法藏館 1430円
大学で獣医学を学んだ真宗興正派嗣法が宗報に連載した法話を1冊に編集する。野生動物の特徴的な行動や身近なペット、日常の食事などから共にあるいのちの尊さを学ぶ仏教エッセイ集。



禅の心で大切な人を見送る 枡野俊明著 光文社 1760円
死者を見送る側の心構えや儀式の意味を曹洞宗住職がやさしく語る。やがて訪れる自身の死の受け入れ方と、心の相続の準備も禅の立場から助言する。



宗教が拓く心理学の新たな世界 福村出版 3300円
「なぜ宗教・スピリチュアリティが必要なのか」を副題とする論考集。全27章のうち本願寺派僧侶の武田正文が「仏教現場と宗教心理学」を担当。



これからの供養のかたち 井出悦郎著 祥伝社 1078円
寺院コンサルティングを手がける著者が住職26人の取り組みを取材し、現代にふさわしい葬儀やお寺づきあいを模索。理想の供養とは何かを考える。



一陽来福 小峰和子著 青史出版 3080円
1年をほぼ5日ごとに分けた七十二候を順に解説。動植物の話題や季節の詩歌の紹介にカラー写真を添える。著 者は仏画家で真言宗智山派の寺庭婦人。



石の考古学 奥田尚著 吉川弘文館 2420円
古墳の石室や寺院の石塔などの石材について石種や採石地を推定し、当時の石工集団や石の運搬方法を紹介。著者は石を肉眼で比較特定する研究者。



表装上達レッスン 掛軸 藤井弘之監修 メイツ出版 2750円
掛軸の表装が自分でできるようになる手順を表具師が写真と共に解説する。和紙の選び方、裂の取り合わせ、糊の使い方、しまい方、仕立て直しまで。



仏師と絵師 筒井忠仁編 思文閣出版 13200円
「日本・東洋美術の制作者たち」を副題に21人が論考を寄せる京大根立研介名誉教授退職記念論文集。「仏教美術篇」と「世俗絵画篇」の2部構成。



国宝普賢菩薩像 令和の大修理全記録 東京美術 2970円
平安時代の国宝仏画「普賢菩薩像」を解体修理した一部始終の記録。所蔵する東京国立博物館が監修し、関わった専門家が解説、総括座談会も収録。



土門拳の東寺 土門拳著 クレヴィス 2970円
写真家土門拳が昭和39~40年に京都・東寺の仏像、伽藍、仏具、仏画、書跡などを撮影した126点を収録する写真集。山本勉ほかが解説。





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