[『月刊住職』 2025年2月号より転載]

仏伝と教学 末木文美士・前川健一編 臨川書店 19800円
主に江戸時代に出版された仏教書をテーマ別に選んで原典翻刻・解説する「近世仏教資料叢書」全六冊の第2巻。仏伝資料と鳳潭の教学書などを収録。



エビス神信仰の研究 田中宣一著 岩田書院 10340円
エビス神の成立や特徴を整理し、商売繁昌・豊作豊穣をもたらす神や七福神としての信仰を考察。後半では国内の漁業・商業・農業地域におけるエビス神信仰の現地調査の成果を公表する。



神仏融合史の研究 吉田一彦著 名古屋大学出版会 6930円
日本の古代から中世にかけて神仏の混淆した信仰の実相と展開を論じる。その前提として、神仏の複合は広くアジアで見られる現象であり、習合ではなく神仏融合と呼ぶべきと提起する。



国分寺造営と在地社会 須田勉・有吉重蔵編 高志書院 7150円
古代律令国家による国分寺建立事業を地域社会がどう実施したかを検証。伽藍の設計や構造、瓦生産や文字瓦などの観点から12人の研究者が論じる。



中世寺院のネットワーク 永村眞著 吉川弘文館 5720円
諸寺院に伝来した文書や聖教から、中世の寺院社会における組織や人々の交流の様相を読み解く。寺僧の修学や戒律の例を見た上で、密教の法流と浄土宗の展開について深く掘り下げる。



中論講義 上 立川武蔵著 法藏館 三八五〇円
龍樹の著作『中論』全27章を和訳し解説する2冊本のうち15章までを収録した上巻。最新研究に基づいて龍樹の論法の仕組みをサンスクリットの専門知識を必要とせずに解き明かす。



踊念仏 大橋俊雄著 筑摩書房 1540円
空也や一遍が用いた念仏踊の展開を、その起源から後世への影響にまで広げて論述。他宗派からの批判や芸能に与えた影響、民間信仰としての継承と遺存する実態なども考察する。文庫判。



「お迎え」の思想 ひろさちや著 佼成出版社 2200円
仏の来迎は死後の世界の有無をあれこれ迷わないために説かれているという視点で、仏典を引用しながら「極楽浄土への往き方」を語る。2022年に逝去した宗教評論家の未発表遺稿。



生きることを教える仏教 田畑正久著 本願寺出版社 1760円
現役医師で在家の念仏者である著者が生死の迷いを超える仏教の教えの受けとめなどを綴るエッセイ集。医療と仏教の協働という課題についても提言。



宗教の日本史 本郷和人著 扶桑社 990円
日本の歴史上“グレー”な宗教観を紹介。「なぜ一向宗は織田信長の脅威だったか」「廃仏毀釈は明治政府の命令ではなかった」など12章。新書判。



インドの宗教とキリスト教 ルードルフ・オットー著 講談社 1210円
ドイツの宗教学者による比較宗教学の古典。キリスト教に匹敵する教えをヒンドゥー教ヴィシュヌ派の救済論に見いだす。立川武蔵ほか訳。文庫判。



死の光に照らされて ラリー・ローゼンバーグ著 薄月 2530円
アメリカのヴィパッサナー瞑想指導者が、老病死と向き合い自由に生きるための仏教の智慧を語る。島田啓介訳、井上ウィマラが仏教瞑想を解説する。



インド亜大陸史話 中田琴子著 東京図書出版 2970円
インドとその周辺国の歴史を石器時代から現代まで詳述。古代の思想宗教の項で仏教を解説。著者は生命科学研究者で既刊に『インドシナ半島史話』。



地図とデータで見る宗教の世界ハンドブック フランク・テタール著 原書房 3850円
キリスト教、仏教、イスラーム、ヒンドゥー教などの起源と勢力図、政治との関係などを地図とグラフで解説。



恋する女帝 周防柳著 中央公論新社 2530円
仏教に帰依した聖武天皇の娘で後継として即位した孝謙天皇(重祚し称徳天皇)を主人公とする歴史小説。女帝には許されぬ道鏡との恋の行方を描く。





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